抗酸化作用を持つ食品を積極的にとることで、老化が抑制され、健康な血管が維持できるというわけだ。それはすなわち、認知症の予防にもつながる。

杉本先生が実践するルーティンとは

「抗酸化作用を持つ物質として注目したいのはポリフェノール。植物に存在する苦味や色素の成分で、自然界に5000種類以上あります。種類によって独自の作用があり、カレーのウコンに含まれるクルクミンや緑茶のカテキン、シークヮーサーのノビレチンなどのように、脳内のタンパク質の凝集を抑制する作用を持つものもあります。

 このほか、高い抗酸化力で知られる赤ワインや緑黄色野菜、血液サラサラ作用を持つ玉ねぎや青魚なども、認知症の予防効果が期待できます

 認知症は65歳を超えるころから発症しやすくなるが、実はアミロイドβは発症の20年も前からたまり始めているという。つまり、認知症予防に取り組むなら1日も早いほうがよい。いつまでも元気な脳を保つためにも、早速今日から実践しよう。

杉本先生が実践している毎日のこと

1・1時間のウォーキングと剣道の素振り
起床後ウォーキングを1時間、そのあとに腕立て伏せを50回、腹筋を50回、竹刀の素振りを200回行っている。「60年前から続けている剣道のトレーニングも兼ねて、実践しています」

2・現役で認知症を研究
論文や資料を読むなど、新しい学習を毎日のルーティンに。今も認知症の新薬の研究を続けている。「学生や若手の研究者たちとの交流や会話も積極的に行っています」

3・趣味は俳句
ウォーキングをしながら毎日俳句を10句作ることをノルマにしている。俳誌に投句するほか、俳句の会を主催し、選句を行う。「俳句を通じて友達がたくさんできました」

4・1日1食と晩酌
食事は毎日昼食だけにして、過食しないように。また、多品目の食品をバランス良く取ることを心がけている。「好きなお酒は我慢せず適量を、豆腐や魚などを肴に飲みます」

5・家族(妻)に感謝
家族、特に妻への感謝を忘れず、その都度「ありがとう」の言葉を伝えている。「感謝の気持ちを持てば謙虚になって相手への尊敬につながり、人間関係が円滑になります」

「脳」に良い5つの食品

・カレー ・緑茶 ・赤ワイン ・シークヮーサー ・青魚
 活性酸素の害から脳の神経細胞を守る、抗酸化作用を持つポリフェノールや、血流を良くし、認知機能を高めるDHA・EPAを豊富に含む食品たち。積極的に食事に取り入れたい。

『82歳の認知症研究の第一人者が毎日していること』
扶桑社新書990円(税込み)

杉本八郎著『82歳の認知症研究の第一人者が毎日していること』(扶桑社新書)
【写真】これを読めば認知症対策がバッチリ…参考になる杉本先生の新刊

取材・文/桑原順子

すぎもと・はちろう 1942年生まれ。薬学者、脳科学者。エーザイ入社後、新薬開発の研究室で高血圧治療薬「デタントール」、そして世界初のアルツハイマー治療薬「アリセプト」の創薬に成功。京都大学薬学研究科教授などを経て、2025年名古屋葵大学学長に就任。