生前、最後に会った日
やなせさんがモデルとなっている嵩については、こんな感想も。
「私が個人的に北村さんのファンなのもあるのですが、めっちゃいい男になったなと(笑)。それと、ナイーブな感じを巧みに表現してらっしゃるなって思います。やなせ先生は本当に華奢でお顔の輪郭も違うのですが、雰囲気がぴったりなのは北村さんの演技力が素晴らしいからだと思います」
やなせさんとは、「たくさんの思い出があるんですよね」と戸田。中でも、印象的だった出来事を挙げてもらうと、生前、最後に会った日のことだった。
「2013年、神戸にできた『アンパンマンこどもミュージアム&モール』のイベントでご一緒したんです。先生は足元がおぼつかなかったのですが、“杖を置いていきたい”とおっしゃられて。たぶん子どもたちにその姿を見せたくなかったのでしょう。私がエスコートして舞台に出ていきました。テープカットのときも“耳が聞こえないので、合図を出してください”ということで、先生の肩を叩いて合図をしました」
そのときのやなせさんの姿を思い出すと、今でも涙があふれてくるそう。
「先生の尽くす姿勢がすごいなって思いました。今やらないのがいちばん良くなくて、50%しか力が出せなくても、そのときできることをマックスでやること。それが“尽くす精神”だと。その大切さを、このとき身をもって教えていただいたと思います」