シェフと役者の二足のわらじ

『メイン・テーマ』の鮮烈デビューから40年余りがたち、今年5月の誕生日で還暦を迎えた。ここにきて心境の変化があったと話す。

最近、何のために自分はこの世界にいるんだろうと考えるようになって。結婚して子どもができたりすると生活のこともあって、役者だけではダメな時期もあったし、不本意な仕事をしたこともあります。でも今は正直になれているかもしれない。自分で個人事務所をやっているから自由さがあって、仕事も全部自分で選択できる。だから飲食店もできたんでしょうね」

 今年2月、高田馬場「家庭料理 ひさご」の共同経営者兼シェフに。ランチ営業をスタートし、自ら厨房に立ち腕を振るっている。

「見たことのない世界を見てみたいという気持ちがあって。ちょっとした憧れもあり、新たにこういう世界に入ったんだけど……。楽しいですね。結構向いてるかも(笑)。ただ体力勝負です。火力がめちゃくちゃ強いから、やけども多いし。何しろこの夏は猛暑で本当に大変です」

「肉を焼くときの油で腕がやけどだらけなんです」。本当にやりたいと思ったことをできているのが楽しい、と笑う野村宏伸 撮影/蒔田稔
「肉を焼くときの油で腕がやけどだらけなんです」。本当にやりたいと思ったことをできているのが楽しい、と笑う野村宏伸 撮影/蒔田稔
【写真】「女子高生が待ち伏せ」アイドル的人気を誇った若かりし頃の野村宏伸

 名物は野村特製「四日市トンテキ」。評判は上々で、リピーターも増えた。野村のファンが駆けつけることも多いが、自ら料理を提供し、言葉を交わし、一緒に写真を撮ってと大サービスだ。

「店に来られたみなさん“本当にいるんだ!”ってびっくりされます(笑)。みんな喜んでくれますね」

 さらに、ライブ出演も決定。9月19日に横浜のライブハウス「THE CLUB SENSATION」で、約40年ぶりにステージで生歌を披露する。

「ミュージシャンの有待雅彦さんに誘われて、久しぶりに歌うことになりました。でも歌詞ってなかなか覚えられないんですよね(笑)。ストーリーが流れていないから、そこはセリフと違うところかな」

 現在は可能な限り厨房に立ち、シェフと役者の二足のわらじを続けているという。今後の展開は? 三足目はあるのだろうか。

「今のところ考えてないけれど、まだわからないですね。なんでも縁だと思うから。今までいろいろ揺れ動いてきましたが、これからも動くかもしれない。なかなか決められないんです。ただこのまま一生ずっとやっていこうとは思ってないし、自然に終わっているかもしれない。

 この年になったから、もうこれで落ち着いていこう、という感覚はないかな。好奇心旺盛で、まだまだいろいろな可能性がありそうって思っちゃう。今までやったことのないことをやってみたいし、何か新しいものが見つかったら、また来年あたり始めているかもしれないですね」


取材・文/小野寺悦子 撮影/蒔田 稔、本誌写真班