「芝居に秀でてるガチなやつ来い」
10月からは来年9月に再演が決まった『朧本能寺』の出演者オーディションが始まるという。
「年齢、性別、プロアマ問わずで、歌に秀でていたり芝居に秀でてるガチなやつ来い!と思ってます」
自分が若いころに干されて腐ってしまった経験があるからこそ、実力のある人、やる気がある人、一芸に秀でる人に門戸を開き、チャンスを与えて、自分がこれまでに得てきたことを舞台の演出を通して惜しみなく伝えていきたいと徳山は言う。さらに今後は歌手として新作ミニアルバムのリリースやライブ、役者として出演した作品の公開も控えている。
「僕の座右の銘は『文句は偉くなってから言え』なんです。“努力に勝る天才はなし”なんですけど、どんなに努力をしていたって苦労はあるし、自分なんて一生偉くなんてなれないと思ってる。だから文句を言えるような日なんて来ないんだから、イラついても、落ち込んでも、失敗しても、うまくいかなくても、『悩んでる場合じゃないよ』と思い直して、また努力していける。そう考えるようになってから、人のせいにしなくなりましたね」
そんな徳山のことを次姉は、「気に入ったゲームにすぐ飽きたり、習い事も続かなかったノリが、演じることだけはずっと続いている。当初は『すぐ辞めるかな?』と思っていたんですけど(笑)。
でも人生でひとつでも誇れることが見つかったのはすごいことだし、本当に天職なんだと思うんです。だからこれからも頑張っていくと思います」と語る。
オーディションでの出会い以来、今も徳山と親交がある森は「徳山は理不尽な目にさんざん遭ってきたけれど、つぶれなかった。それは彼が唯一無二の存在だからだと思います。彼は美しさを持っていますが、奥行きや重さも持っている。だからこれからも素晴らしいものを残してくれると思いますよ」とエールを送る。
「僕の場合、本気で『辞めよう』と思うと、不思議といい役やいろんなオファーを頂いたり、仲間と出会ったり、楽しいことが起こるんですよ。だから大変なときは『辞めようと思ったら……すごい運、来るかな?』なんて考えたりして(笑)。
でも、もし『もう一回人生やり直せる』となっても、僕は今の自分の人生を選びます。苦労して、とんでもない波乗り人生ですけど、本当にいい仲間に出会えたなって思っているんで」
クールに見られがちな徳山だが、心の中には誰よりも熱い思いと情熱がみなぎっている。
<取材・文/成田 全>