トントン拍子に仕事が舞いこむ

 このドラマの放送直後、徳山のもとに出演の依頼が来る。'06年放送の『仮面ライダーカブト』の矢車想(仮面ライダーザビー/キックホッパー)役で、オーディションではなく徳山を指名するオファーだった。またそのつながりで'08年には『炎神戦隊ゴーオンジャー』で須塔大翔(ゴーオンゴールド)役を演じることになるなど、それまでの状況が嘘のようにトントン拍子に仕事が舞い込んだ。

『ホーリーランド』('05年、テレビ東京系)の伊沢マサキ役が運命を変えたという
『ホーリーランド』('05年、テレビ東京系)の伊沢マサキ役が運命を変えたという
【写真】「イケメンすぎる」ファンレターが毎日届いていたという当時の徳山

「『ホーリーランド』での僕の演技が鮮烈だったらしくて、それを見てオファーしたと言っていました。だから『ホーリーランド』が音楽に続く第二の“蜘蛛の糸”で、僕の運気がブチ上がるきっかけになったんです。冷たかった事務所の人たちも、見直してくれましたし。一回落ちた人間って、なかなか上には行けないものですけど僕は運が良かったんでしょうね。

 もしあのまま波にのまれずに役者をやっていたら、たぶん25歳くらいで調子に乗って、勉強することも忘れて、下手したら人生の終結まで考えちゃうぐらいだったかもしれないなって。伊沢マサキは一回落ちた経験がないとできなかった役でしたから、今考えると必要な挫折だったんだと思います」

楽しいと思えることを信頼できる仲間と

 5年ほど前、徳山は突然、耳の不調に悩まされるようになった。

「耳鼻科へ行ったら、すぐ『向こうで検査します』と言われて。そうしたら耳管開放症だと診断されたんです」

 耳管開放症は耳と鼻、喉をつなぐ耳管が開きっぱなしになり、耳がふさがった感じになったり、自分の声や呼吸音が響いたりする症状が出るもので、徳山は「舞台に立っていても、急にパッと耳が聞こえなくなっちゃったりして、集中力も保てないから、お芝居ができなくなるんです。もちろん音楽も……」と症状のつらさを吐露する。

 それまで健康だった徳山だったが、耳の不調だけでなく突然の大腸の病気で入院、さらに'20年には新型コロナウイルスに罹患し、体外式膜型人工肺「ECMO」を使用する寸前まで症状が悪化してしまった。

 その後体調は持ち直し、不調と付き合っていく術を得たものの、コロナ禍で仕事が軒並みキャンセルとなり、すっかりやる気を失ってしまう。

「僕の仕事は『調子のいいときだけ頑張って何かやる』みたいな、そんな都合いいものじゃないので、これはもうダメかな、って……。このときは事務所も辞めて、芸能界とは全然別の仕事を立ち上げようとしていたんです」

 それを止めたのが、現在徳山が所属する事務所「H.I.J company」を立ち上げたJayだ。Jayはギタリストで、もともと徳山と同じ事務所に所属していたバンド仲間であり、友人だった。

「せっかくやってきたことなんだから、辞めちゃうのはちょっともったいないんじゃない?と話して、じゃあ一緒にやってみるか、会社をつくるよということになって事務所を立ち上げたんです。

 徳山は縛られすぎるのがあんまり好きじゃないので、自然体で、自分たちが楽しいことをやっていこうよ、という方向で始めたんです」

 ところが思った以上に事務所の仕事や業務が増え、今ではステージ制作まで手がけるほど忙しくなり、「あれ? 話違うんだけど、って感じになっちゃって」とJayは笑う。