子どもと遊ぶ時間に拒否反応……
ベトナムで暮らし始めたのは2024年春。マミさんにとっては初めての専業主婦生活だ。仕事をしていた時間が丸々空くので、読書や勉強もできると期待していたが、自分の時間はほとんど持てず、イライラすることが増えた。
「子どもと遊ぶのも拒否反応というか、もう本当に闇でしたね。リカちゃんごっこも、働く車のお絵描きも、絵本の読み聞かせも、楽しくないのに、延々と付き合わなきゃいけない。
水だ何だ要求されっぱなしで、もう奴隷だわって思いましたね。働いていたときは、5分でも時間があったら、『何々ごっこしよ』ってノリノリで遊んでいたのに、不思議ですよね」
イライラは夕方になるとひどくなった。夕飯と翌日の弁当を作り、子どもたちにごはんを食べさせる。風呂に入れ、寝る前に本を読んで、午後8時半には布団に入る。少しでも思いどおりにいかないと、激しい怒りに襲われた。
「やめろって、言ってんでしょ!」
そう怒鳴り散らし、虐待として通報されるんじゃないかと思うほど、泣きわめかれることもあったという。
「専業主婦なんだから、食事も子どもの世話も完璧にできるはず。なのに、それができない怒りですかね。Xとかインスタで発信されているお母さんの書き込みを読んでいると、叱らない子育てが絶賛されていて。叱るんじゃなくて諭すみたいな。
令和のお母さんはみんな怒らないで素晴らしい子育てをしているのに、それに比べて、自分は力ずくで怒鳴っていて恥ずかしい。いまだに怒ってばかりいる自分は本当にダメなやつだって思っていました」
怒鳴る母親を見ていた上の娘がおびえているように感じて、マミさんはハッとした。
「もう見たことがないくらい、おびえた目をしていたんです。こんな目をするような子になって、この先どうなるんだろうって」
どうにかしないといけない。そう思って、マミさんが頼ったのはネットだ。怒りたくなったら子どもたちに、「ちょっと1人になってくる」と言って個室に入った。「子育てやめたい」という言葉で検索したり、チャットGPTに「母親に向いていない」「何もやる気が起きないけど、どうしたらいい?」と相談したり……。
「何かいい解決策は得られましたか?」と聞くと、「全然」とひと言。
「疲れているので、ご主人とか頼れる人にお子さんを預けて休みましょうとか。あ~、それができたら、検索しないでしょうみたいな答えばかりで(笑)」