
9月29日から放送が開始された、小泉八雲とその妻・セツをモデルとしたNHK連続テレビ小説『ばけばけ』。「雪女」や「耳なし芳一」の怪談など、小泉八雲が著した多くの名作の原点となり、執筆活動を支えた妻・セツと出会った地が島根県松江市。
ドラマにまつわる松江の観光スポット・名所、小泉八雲・セツ夫妻の半生を紹介します。
セツが語り聞かせた民話や伝承を本にまとめる
「『ばけばけ』放送を機に、この秋から冬にかけて松江市内では、小泉八雲とセツ、八雲の『怪談』にちなんだ、朗読やワークショップなどのイベントが順次開催されます。市を挙げて盛り上げているところです」
そう話すのは、松江市観光振興課の後藤悠希さん。そもそも小泉八雲ことラフカディオ・ハーンとは、どういう人物なのか。
八雲(ハーン)が日本の地を初めて踏んだのは明治23年(1890年)のこと。松江に到着して、しばらくは富田旅館に逗留(とうりゅう)し、英語教師として尋常中学校に勤めながら、ジャーナリストとしても執筆活動を行っていた。
松江の風景や日本人に魅せられた八雲の見聞録は、『知られぬ日本の面影』として出版されている。

「八雲は松江を大変気に入っていたようです。松江は八雲が幼少期を過ごしたアイルランドと似たところがあり、懐かしく、なじみ深い場所だったのではないでしょうか。
また八雲は西洋人でありながら西洋風を嫌い、何事も日本風を好んだようです。だからこそ古きよきものが残る松江を好んだのでしょう。古くからある神社仏閣や宍道(しんじ)湖の美しい夕日など、松江の情景が好きだったようです」(後藤さん、以下同)
ほどなく富田旅館から移った家で、女中として雇われたのが松江の武士の娘、小泉セツだった。八雲の身の回りの世話をしていたセツは、あるときから日本の民話や伝承を八雲に語って聞かせるように。のちに代表作『怪談』が生まれた。
「八雲にとってセツは、よい妻であると同時に、よい語り部で、八雲の再話文学創作における、最大の功労者だったのです」
セツの懐妊を機に帰化することを考え始め、神戸に移ったあと正式に結婚して「小泉八雲」となる。日本で191番目の国際結婚だったとか。