島根の原風景が怪談・著作の原点に

 八雲はセツの語った伝承や民話をもとに、またセツの考えも取り入れながら「再話文学」を完成させた。その代表作が、「耳なし芳一」や「雪女」などで知られる『怪談』。著書の中で紹介されている物語は、松江を舞台にしたものも数多くある。

普門院

 小豆とぎ橋が生まれた寺院

『怪談』収録「小豆とぎ橋」の舞台。夜な夜な幽霊が小豆を洗う橋の下で、能の演目『杜若(かきつばた)』を謡うと不吉なことが起こるという怪談を、普門院の住職から伝えられる。大名茶人・松平不昧公ゆかりの茶室「観月庵」も有名。

月照寺

 大亀が夜中に暴れ出す!?

月照寺
月照寺

 松江藩主・松平家の菩提寺。境内の大亀の石像は、夜な夜な隣の蓮池に飛び込み、市中を暴れ回ったという伝説がある。八雲は「ここが好きです。ここに埋めてほしい」と語るほど、この寺が気に入っていた。

大雄寺(だいおうじ)

 母の愛は死より強い

大雄寺(だいおうじ)
大雄寺(だいおうじ)

 死んですぐに埋められた墓の中で、赤ん坊を産んだ女が幽霊になって飴(あめ)を買いに行き、子どもを育てていた物語「飴を買う女」の舞台となった寺。八雲は「母の愛は死よりも強し」と物語を締めくくっている。

「耳なし芳一」の舞台となった赤間神宮

 平氏の亡霊たちに夜ごと招かれ、琵琶の妙技を披露していた盲目の琵琶法師・芳一。危険に気づいた住職が、芳一の身体中に経文を書いて怨霊を追い払ったが、経文を書き忘れた耳だけちぎり取られる……。

 下関市にある赤間神宮に伝わる『耳なし芳一』の説話を、八雲が英訳し、『怪談』に掲載。「耳なし芳一堂」が建立されている赤間神宮では、毎年7月、耳なし芳一琵琶供養祭が開催されている。

赤間神宮
赤間神宮

【取材協力・写真提供】
「松江観光協会」https://www.kankou-matsue.jp/ 観光案内は、JR松江駅北口出てすぐの松江国際観光案内所へ。島根県松江市朝日町665[TEL:0852-21-4034]
「小泉八雲記念館」https://www.hearn-museum-matsue.jp/ 島根県松江市奥谷町322[TEL:0852-21-2147]

松江市内地図 地図/やまだやすこ
松江市内地図 地図/やまだやすこ

取材・文/池田純子