「絶対にやめない」理由

 ライバルはコンビニで、

「自販機でしか買えないものの需要が高く、意外なものが売れます。夏場に冷やし甘酒が好評だったり、今は不二家のネクターが大人気。先日は、ドクターペッパーをまとめ買いするおじいさんがいました」

 その売り上げはというと、

「最大で月に700本くらいでした。近くに工事現場があって、その作業員の方が買ってくれる“工事特需”のおかげです。普段は月に300本ほどは売れます。黒字ではありますが、大した儲けにはなっていないです(笑)」

かつて末高斗夢の名で芸人として活躍し、'11年に落語家に転身した錦笑亭満堂
かつて末高斗夢の名で芸人として活躍し、'11年に落語家に転身した錦笑亭満堂
【写真】落語家で「自販機オーナー」!? 元・末高斗夢の“仕事姿”

 それでも自販機オーナーは「絶対にやめない」と言う。

「お金を稼ぐ大変さや“仕事の原点”を感じるので、それを忘れないようにしたいんです。ラインナップや金額を決めて、商品の段ボールを運んで、それを自販機に補充し、汚れたら掃除して……と、地道な作業の連続なので」

 こうした経験が本業の落語にも結びついて、

「自販機は目の前にお客さまがいないぶん“ニーズ”を読み取ることが大事。約5年で、それは自分の思いとは別物だと知りました。落語も、その場に合ったネタを選ぶのがプロ。小学生に向けて花魁の艶っぽい人情話をしたってしょうがないですから。“お客さまを喜ばせる”という意味では同じなんです