いくつものチューブがつながれ、ミルクを飲むこともままならない音十愛さん。悲しみに浸る間もなく、壮絶な子育ての日々が始まった。

周囲の人に何度も救われてきた

口唇口蓋裂の手術をするにもある程度の体重がないとできないのですが、ミルクを飲めず逆流してしまう状態。さらに目が見えないことから、頭を打ちつけたり、叩いたりと激しい自傷行為がありました。また、昼夜問わず泣き続ける、自分の便をこねるなど、いっときも目が離せない状態でした

今年1月、高知市主催の成人式に参加。初めてお化粧をした 撮影/山崎理恵さん
今年1月、高知市主催の成人式に参加。初めてお化粧をした 撮影/山崎理恵さん
【写真】嬉しそう!初めてのお化粧をして成人式に参加した音十愛さん

 入院期間は3か月を過ぎ、理恵さんも睡眠不足と疲労でボロボロになっていく。

それでも入院中は、世間の目を気にせずに守られていました

 勇気を出して街に出れば「気持ち悪い」「かわいそう」という言葉が飛んでくる。

「この子とふたりで死んでしまいたい」と思ったことも、一度や二度ではなかったという。しかし、上のふたりの子は、すんなりと音十愛さんを受け入れてかわいがり、友達にも見せたがった。

子どもって素直だから、初めは怖がっていても、だんだん変わるんですよね。何回か家に来るうちに“音十愛ちゃ~ん”って、普通に接してくれる。ああ、人は知らないから怖いんだとそのときに気づきました

 それから理恵さんは音十愛さんをベビーカーに乗せ、外にも出るようになった。回数を重ねるうちに、目を背けていた人も、励ましてくれるようになったそう。

自分ひとりじゃとてもやっていけなかったと思います。出産後ずっと泣いていたときに、助産師さんが“お母さん、いちばんつらいことは何?”と寄り添ってくれたことで、少し心の整理ができ、ソーシャルワーカーにつないでもらったり、そこから大学の教授につながったり、盲学校の幼稚部に通えることになったり……。周囲の人に何度も救われてきました

 最初は音十愛さんの病名や障害の原因は不明だったが、のちに遺伝子変異による「ゴルツ症候群」という難病であることもわかった。

 小児科、眼科、耳鼻科、口腔外科など、病院通いは続いたが、音十愛さんが5歳くらいになると、体調が少し落ち着く。しかし、今度は夫がうつ病を発症。その後、離婚することとなり、理恵さんはシングルマザーとして生活することに。

 仕事を掛け持ちし、介護も続ける中で疲弊し、家庭は荒れていく。理恵さん自身も心療内科に通う日々が続いた。

「生活は苦しく、もう生まれ故郷の高松に帰って実家を頼ろう」と思っていたとき、最後だと思って引き受けた講演で、地元の高知新聞の記者と出会う。

 音十愛さんと理恵さんの歩みを記事にしたいとのことで、連載が始まり、それはとても大きな反響を呼んだ。

各地から応援の言葉をいただき、自分の生き方を認めてもらったようで、自己肯定感を上げてもらいました。同じような状況のご家族など、そこからまた、いろいろな人につながっていくんですね