男性は、長患いをした兄が亡くなるまで兄嫁が看病で大変だったことも知っていた。そのためほんの報告のつもりが、誤解されたことにショックを受けたのだ。
見事な生きざまだった独身男性
そこで「人に頼らず、自分のお金を老後に使おう」と決めて黒澤さんの会社と死後事務委任契約を結んだ。
「男性の住まいのアパートが入院中に建て替えが予定されていたので、私たちは引っ越しの手伝いをしました。また緊急連絡先が弊社になりました」
入院の際、男性から看護師にその旨を伝えていたおかげで、容体が急変したときに黒澤さんらが本人の尊厳を守り、希望どおりにサポートした。
「お葬式のときには、いとこなどが集まりました。見事な生きざまだと最期まで立ち会った私たちは感じましたね」
事例5
60代男性の突然の事故。遺産は幼少時に1回会っただけの甥に
遺言を残していなかったために、思わぬ財産相続が起こることもある。
「時には病院から依頼されることもあります。千葉県の急性期病院から、60代男性が事故に遭い、重傷で身体は一切動かせないが、意識はしっかりしているため来てもらいたいという依頼でした。事故から半年経過していましたが、入院費が支払われていなかったのです。病院側は治療費の請求に困っていました」
黒澤さんは病院を訪れ、身体は思うように動かせないが意識ははっきりしている男性に、全面的な支援の提案を。すると頷き、意思表示を確認できた。そこで公証人を病院に呼び契約を交わしたのだ。
「配送員だった男性の事故当時の着衣のポケットから、キャッシュカードで現金を引き出した際に受け取った、口座の残高が記された紙が見つかりました。そこから支払いできる能力を確認できたため、病院が弊社に連絡をしたそうです」
契約締結後、黒澤さんは事故の加害者からの示談金や保険会社との交渉を依頼する弁護士に引き合わせるなど、滞っていた事故処理も病院対応も一手に引き受けた。その後、間もなく男性が息を引き取ったという。
「残された遺産を相続人に引き渡す義務もあります。すると病死した兄と離婚した元妻との間に息子がいて、男性にとって甥にあたるため、甥がすべて相続しました」











