この金額はもし契約した会社に倒産などのトラブルが生じたとしても、信託制度の適用で守られているという。汐里さんはほかに遺言のサポートも依頼した。
事例2 「見守り」で一命を取りとめ、任意後見契約で入居をサポートの80歳女性
任意後見契約にある“見守り”で助かった高齢者もいる。賃貸住宅に1人で住んでいた80歳の美子さん(仮名)はトイレの中で、脳梗塞で倒れた。
センサーからの緊急通報を受けた黒澤さんが駆けつけると美子さんの意識がなく、救急車で搬送されたところ、一命を取りとめたが後遺症が残ったという。猛暑の日の午後、外出前にクーラーを消した直後だったため、あと少し遅れたら手遅れになっていた。
任意後見契約によって財産管理を任されていた黒澤さんは賃貸物件を解約し、荷物を処分して施設を探す。美子さんは年金で入居できた。
「元気なときに自分で将来を想定して、契約することも終活のひとつですね」
事例3
夫の前妻の子どもと相続でもめたくない70代女性の選択
主婦の靖子さん(仮名・73歳)は10歳年上の夫と結婚。年上の夫を頼りにしていたが、夫が高齢になると、立場が逆転していった。
「子どもがいないご夫婦で、夫には前妻との間に50代の息子さんがいたそうです。夫が70代になったころ、夫婦それぞれがお互いに財産を相続させる遺言を作成しました。80歳を超えたころに夫の物忘れが増えてくると、靖子さんは夫を看取った後で1人になる準備をしましたが、気になることもありました」
自分が元気ならいいが、もし自分のほうが先に倒れてしまったら、夫が相続する靖子さんの財産も、夫の子どもが法定相続人となる。複雑な心境だった。
またもし夫が先に他界した場合は、いくら遺言を書いていても、それ以外の死後の事務手続きのことで、前妻の子どもと相続人として協力しなければならない。それも避けたかった。
「そこで靖子さんは夫と自分もそれぞれ死後事務委任契約を結び、死後のことはすべて私たちが仕切ることにしました。煩わしいことから解放された靖子さんは、ホッと安堵した表情でしたね」
事例4
独身男性が、がんに罹患。兄嫁から言われたある一言で決めたこと
おひとりさまの場合、血のつながりのない親族との関係に悩まされる人もいる。病気や事故に遭ったときは、特に顕著となる場合もある。
「65歳の技術職の独身男性は、定年後に再雇用で働き出したときにがんを宣告され、面倒を見てもらうつもりはないものの、身内ですでに亡くなった兄の妻に報告したそうです。ところが兄嫁から“申し訳ないけど迷惑かけてほしくないし、お金もいらないから、面倒を見られない”と言われてショックを受けてしまいました」











