目次
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ー 正常な判断ができなくなっても本人の尊厳を守る
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ー 委任契約では身元保証人の役割をお引き受けも
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ー 事例2 「見守り」で一命を取りとめ、任意後見契約で入居をサポートの80歳女性
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ー 見事な生きざまだった独身男性
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ー 事例6 おひとりさまの叔母を看取った30代女性。遺言書に驚愕

 

 総務省の調べによると、2050年には単独世帯が4割を占め、高齢者世帯がその半分にもなるといわれている日本。自身の病気や認知症、果ては死後の“取り扱い”をどうするかが、「独り身」の悩みになっている昨今。6つのケースで考える人生の終え方とは─。

正常な判断ができなくなっても本人の尊厳を守る

 国勢調査によると2010年以降、核家族の典型である「夫婦と子どもからなる世帯」を追い抜き、「単独世帯」がトップとなって今や4割近くになった。

 「家族の“ひとり”化」が増加して、未婚者、離婚者、死別者、さらに夫婦であっても墓を同じにしないで、一方が死ねば最後は「ひとり」と覚悟しているシングル予備軍など、多くの人が「おひとりさま」として死と葬送を迎える時代になっている。

 死と葬送に関しては一般人も著名人もすべて平等だ。’22年7月に大腸がんによる多臓器不全で他界した女優の島田陽子さんが「孤独死」と報じられ、墓をめぐって紆余曲折があったことはまだ記憶に新しい。

 島田さんはお嬢様役でブレイクし、昭和を代表する女優の一人。’80年には米ドラマ『将軍 SHOGUN』で日本人女優として初のゴールデングローブ賞主演女優賞を受賞。「国際派女優」と呼ばれるも、その後はスキャンダルが絶えず、晩年は身寄りのないおひとりさまだった。

 自分で墓を準備していたがその墓には入れず、島田さんの遺体は渋谷区により火葬され、無縁仏として合葬されるところだった。

 だがさまざまな経緯を経て2か月後に都内のお墓に納骨されたという。島田さんの墓をめぐる問題は、一般人にとっても決して遠い話ではない。

 そんな、家族に頼らずに、自分の老後とその先の死を迎えようとする人を、弁護士や行政書士などとタッグを組んで支援する株式会社OAGウェルビーR代表取締役の黒澤史津乃さんは、次のように語る。

ご本人が元気なうちに公正証書によって契約を結びます。家族の代わりにさまざまな支援を行う権限をいただき、正常な判断ができなくなってもご本人の尊厳を守って、ご希望を実現するお手伝いをしています

 病気や認知症になったとき、また亡くなった後は、自動的に意思決定の主役が家族になる。だが家族がいなかったり、家族がいても頼りたくない人が、生前に葬儀や納骨の役割を選任する。実際にどのような人たちが活用しているのだろうか。

事例1 

母の死後、財産相続をめぐって妹と決裂。おひとりさまとして終活を決めた女性会社員

 東京都内の会社で営業事務を担っている汐里さん(仮名・65歳)は、4年前に同居していた母を看取ると、関西に住む妹と絶縁状態になった。理由は母の遺産相続のことでもめて、調停に至ったからだ。