汐里さんは生前の母と一緒に、10年以上前に他界した父の介護も担いました。3歳年下の妹は結婚してから関西に住み、子育てや仕事を理由に、両親の介護に非協力的だったそうです」(黒澤さん、以下同)

委任契約では身元保証人の役割をお引き受けも

 母が亡くなったときに汐里さんは実家の家を相続し、母の遺産の半分をもらえると思っていた。ところが─。

汐里さんの妹は、同居する姉が両親を介護するのは当たり前という態度でした。家の相続を含めて財産は半分ずつの相続を求める妹さんに対して汐里さんは反発し、やがて調停は決裂しました

 調停によって姉妹の間に禍根が残ってしまった。シングルの汐里さんは、一生懸命に築いた財産が、自分の死後に法定相続人である妹や妹の子どもに相続されると思うと身震いがした。

 そこで汐里さんは、死後の財産を妹らに残さず、さらに老後や死後、世話にならずにすむようにOAGウェルビーRと次のような契約を結んだ。

(1)委任契約(2)任意後見契約(3)死後事務委任契約。

(1)の委任契約には元気なときからの“見守り”が含まれます。内容は週2回、こちらからショートメールを送信し、クリックしていただくことで安否確認がとれるというもの。もうひとつはセンサーを使用した安否確認。在宅中の冷蔵庫の開け閉めやトイレに10時間以上行かなかった場合に“異常”の連絡が入り、スタッフが駆けつけて安否確認をします

 60代の汐里さんはショートメールだけを選択したが、70代以降のほとんどがセンサー確認を利用しているという。

また委任契約では、“見守り”以外にも入院や施設入居など支援が必要になったときの手続きや身元保証人の役割をお引き受けします。特に急な病気になると医療の意思決定ができなくなりますので、契約時に本人が想定した方法を記録しておき、その意思を本人に代わって医師に伝達します。それを踏まえて医師が本人にとって、いちばんよい治療法を行う。いわば“本人の意思の推定材料”を私たちが医師に伝えるということです

 (2)の任意後見契約は、本人が元気なうちに将来、判断能力が低下したときに備えて、信頼できる人に財産管理などを任せる旨を定めた公正証書で作成する契約のことだ。

公証役場に申し込んで作成します。本人から聞き取っている事前の意思や希望を、認知症になった後にも実現して差し上げるには、お金の管理をする役割も必要です。任意後見契約は、横領などができないように家庭裁判所と監督人のダブルの監督を受けながら、認知症になった後の本人の財産管理を行う仕組みです

 もちろん認知症にならずに生涯を終える人もいるが、汐里さんはもしもの場合を想定しての契約だという。この任意後見契約は掛け捨てとなっている。

(3)の死後事務委任契約というのは、亡くなった後のさまざまな弔いの手配です。葬儀や埋葬の手配、行政手続き、住居の整理などですね

 汐里さんは黒澤さんの会社と(1)~(3)までの契約を結んだ。費用は契約時の手数料が3つセットで66万円。ほかに死後事務の費用として葬儀代実費を含む120万円の預託料が必要。