60代はまだ元気だからと遺言書を用意しなかったおひとりさまの男性。こつこつと貯めた財産が幼少のときに会ったきり、その後、縁もなく存在すら記憶になかった甥に相続させることになった。
男性には、ひょっとしたらもっと縁の深い人がいたかもしれない。もしもの場合に備えておくことも大事だ。
事例6 おひとりさまの叔母を看取った30代女性。遺言書に驚愕
遺言を書き換えたほうが良かったというケースもある。
「70代の母親をがんで亡くし、子育てをしながら働いている30代女性が、母を看取ったあとに、今度は母の妹を看取ったそうです。60代の叔母さんもがんに罹患。バリキャリだった叔母さんは子どもがいなかったので、姪である女性は一生懸命に看病。ところが死後に遺言が見つかると、叔母さんの財産がすべて、ある団体に寄付されたそうです。姪は“お金目的で看病したわけじゃないから”と言いましたが、親族の間にやるせない気持ちが残ったそうです」
この場合は、看病してくれた姪にも遺産の一部が渡るように、元気なうちに遺言を書き換えるべきだったと黒澤さん。
「自分の人生のデザインをつくっていくことが大事です。自分にとっても、そして身近な人のためにも」
人生100年時代といわれるが、寿命が延びたものの、長生きするにつれて認知症の発症率が高くなる。元気で自分で判断できる時期に、死後のことも含めて備えることも人生100年時代を生きる知恵といえるだろう。
取材・文/夏目かをる
黒澤史津乃さん 行政書士、消費生活アドバイザー、OAGウェルビーR代表取締役。家族に頼らない老後と死について、高齢者の法務問題に携わっている











