原さんは今年「リンパ管静脈吻合術」という手術を受けた。毛細血管とリンパ管をつなぎ合わせ、滞っているリンパ液を血液の流れに乗せる治療だ。
「気温や湿度が上がると代謝が上がり、血液の流れが速くなります。でもリンパ管の流れがついていけなくて、むくみやすくなるんです。今年の夏は特にむくみがひどくて、それで手術を受けることにしました」
休息がいちばんの薬
ただ、この手術で100パーセント治るわけではなく、あくまでも補助的な治療だという。
「最初は『治療すれば治るのでは』と期待していました。でも発症して2年たって、ようやく完治はしないんだと理解できました。年齢とともに血液やリンパの流れは悪くなります。今はいかにこれ以上悪化させずに維持していくかを目指しています」
人によっては、リンパ液が漏れて皮膚付近にたまった脂肪を取り除く脂肪吸引を受けるケースもある。放置すると「象皮症」という皮膚が硬く厚くなる状態になってしまうことも。がんの治療後、むくみの症状があれば、早期に専門医に診てもらうことが重要だ。
また、日常生活では医療用弾性ストッキングを着用することが必須となる。医療用弾性ストッキングは厚生労働省の定める保険適用で、決められた本数を3割負担で購入できる。
「朝起きたらストッキングをはいて圧を均一にかけて、むくみが1か所に集中しないように分散させます。もうブラジャーみたいなもので、これがないと出かけられません。リンパ浮腫の人を対象にした体操もあるそうで、今度教えてもらう予定です」
原さんはリンパ浮腫がセルフケアでラクになることも実感している。
「やっぱり休息がいちばんの薬です。しっかり寝ると、朝はむくみがマシになっています。お風呂で石けんをつけて、リンパを流すように軽くなでるとむくみ軽減につながります。リンパ浮腫があると皮膚は傷つきやすくなります。
傷から菌が入ると、蜂窩織炎という感染症を起こして高熱が出たり、入院が必要になるため、乾燥する季節は特に保湿を心がけています」
そして同じ病気の人が共感し合える場所があることで、心が軽くなることを原さんは経験してきた。
「『よつばの会』を15年間主宰してきましたが、同じ病気を経験した者同士だからこそ『ここが痛かったよね』『これがつらかったね』と語り合える話があります。悩みを打ち明けたり、近況報告し合うだけで、気持ちがふわっと晴れるんです。会に参加した人同士がお友達になって、その後も仲良くされているのを見るとうれしいですね」
原さん自身、リンパ浮腫になったことを悲観的に思っているわけではない。
「がん治療によって命も救っていただきましたが、どうしても痛めつけている部分があるのは否めないので、うまく付き合っていくしかありません。ほかの患者さんもそれぞれに工夫して向き合って受け入れているのが励みになっていて、今はあまり気にしていないというのが本音です」











