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ー 大河後も華々しい実績を重ねていきそう

 宝泉薫さんによる『週刊女性』の名物連載「人生アゲサゲ分かれ道」。今、ニュースな横浜流星さんを取り上げます!

大河後も華々しい実績を重ねていきそう

 今年最も飛躍した役者は誰か。その有力候補が、横浜流星だ。

 NHK大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』の主役を完走。大ヒット映画『国宝』では、吉沢亮扮する主人公のライバルかつ親友役を演じた。

『国宝』は『踊る大捜査線 THE MOVIE 2』が持っていた実写邦画の興行収入記録を22年ぶりに更新したことでも話題に。吉沢と横浜も、織田裕二や柳葉敏郎のように第一線で長く活躍していくのかもしれない。

 なお、横浜は『国宝』の公式SNSで「運命的なものを感じた」と発言している。デビュー作『仮面ライダーフォーゼ』(テレビ朝日系・2011~2012年)でも、似た設定で吉沢と共演していたからだ。たまたま、吉沢の役名が「流星」だったことから、吉沢も、

「流星さんって言われたら、ふたりして向くっていう、なかなか面白い現場ではありました」

 と、振り返っている。

 ちなみに、主役は福士蒼汰で、ヒロインは清水富美加(現・千眼美子)。清水はNHKの朝ドラ『まれ』などで売れっ子になったが、出家を理由に表舞台から去った。福士や清水に比べると、吉沢や横浜の出世スピードは遅い。吉沢は仮面ライダーのひとりだったから、映画版にも4度出演したが、そのつど、出番の量や質にこだわっていて、昭和の芸能人みたいなアツい上昇志向が逆に新鮮だった。

 一方、横浜は仮面ライダー役ではなく、ドラマのみの出演。同じテレ朝系戦隊ヒーローものの『烈車戦隊トッキュウジャー』(2014~2015年)で注目されたが、センターポジションは志尊淳だった。

 しかも、その後、スランプに突入。子ども向けにわかりやすく演じてきたことで「戦隊芝居が抜けてない」と指摘され、オーディションに落ちまくったことを明かしている。少年時代に空手で世界一になったこともあるだけに、アクションがハマりすぎていたというのもあるのだろう。

 実際、特撮ヒーローもので売れても、消えていく人は珍しくない。横浜は複数の演出家のワークショップに参加するなどして「(戦隊芝居を)抜く作業」に励んだという。

 そのかいあって、2019年の『初めて恋をした日に読む話』(TBS系)で本格的にブレイク。深田恭子の相手役で、ピンク髪が強いインパクトをもたらした。その後は順風満帆だから、この「戦隊芝居が抜けてない」期間が一大転機だったわけだ。

 問題は大河俳優となったあとの展開だが、これについてはわりと楽観できるのではないか。近年、朝ドラ女優については、そこがキャリアの到達点みたいになってしまい、その後失速しているケースも目立つが、大河俳優はそんなことは少ない。古くは石坂浩二や渡辺謙、新しいところでは妻夫木聡や鈴木亮平、さらには吉沢亮のように、大河後も華々しい実績を重ねていく人が多いからだ。

 とはいえ、最近はスキャンダルへの風当たりが強く、一発退場ということもある。『国宝』に関しても、今年1月に吉沢の飲酒による不祥事が報じられ、公開への影響が取り沙汰された。吉沢サイドの対応がうまくいったことで事なきを得たものの、横浜もけっこう気をもんだのではないか。

 飛躍を遂げた分、ネットニュースのネタにされる危険も高まった。あの大河俳優が、とか、あの国宝役者が、といった見出しに使える肩書を彼は2つも背負ったのだ。『べらぼう』の主人公のように「ありがた山」とばかりも言ってはいられない─!?

ほうせん・かおる アイドル、二次元、流行歌、ダイエットなど、さまざまなジャンルをテーマに執筆。著書に『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)、『平成の死 追悼は生きる糧』(KKベストセラーズ)。