物価高のまま迎える年の瀬。寒波が本格的な冬の到来を告げる中、東京の片隅でひっそりと暮らす路上生活者たちはどのような苦労と向き合っているのか。声なき声に耳を傾けた─。
ホームレスの数は2002年以降、最少の557人
「世間の目は厳しいね。空き缶を集めていると“持っていくな!”と怒られたりするし、ストレスをため込んでいる人が増えたんじゃないかな。殻つきのゆで卵を投げつけられたこともある。硬くて痛いんだよ、あれは。物価高で食料品は高くなったし、冬本番を前に身構えているよ」
と話すのは東京都台東区のホームレス・板倉健一さん(79=仮名)だ。
都は'25年11月、都内の路上生活者の概数について8月に実施した調査結果を公表した。2002年以降、最少の557人だった。'25年1月の調査より8人減り、過去最多の'04年8月の6731人と比べると10分の1以下に減少した。
「減少の背景には、都と23区が共同で取り組んできた自立支援センター運営などの効果があると考えています。センター運営を受託する社会福祉法人のスタッフが週1回〜月1回程度の頻度で路上生活者の巡回相談を実施しており、本人の希望や体調などを踏まえて、センター利用のほか生活保護受給や医療機関受診につなげています。
もちろん話に乗ってくれなかったり、“自分は路上生活がいい”という方もいます」(東京都福祉局生活福祉部の担当課長)
かつて隅田川の堤防沿いにびっしりと並んでいたブルーシートや段ボールでつくる簡易テントは、いまはわずかに点在するだけ。日中は留守にしているケースが目立った。
冒頭の板倉さんはアルミの空き缶を収集し、1キロあたり250円で業者に引き取ってもらい生計を立てている。
「自転車で周辺を回って10キロ集めるのに3時間以上かかる。手や足でぺちゃんこにして仕分けるのに2時間以上、休憩を挟みながら一日8時間はかかる。優しいおばあちゃんもいて“これ持っていってください”とまとまった量をくれるんだよ。雨や雪の日は手が冷たくてやっていられない。1週間作業して平均1万円ぐらいの収入にはなりますね」(板倉さん、以下同)
運搬用自転車のタイヤがすり減ってツルツルになり廃車寸前なのが悩み。稼ぎはほぼ食費に消え、楽しみはタバコとワンカップの日本酒。贅沢はチェーン店での外食だ。
「外食は物価高で1食1500円ぐらいかかるようになったから滅多に行けなくなった。スーパーのおにぎりやお惣菜も値上がりしてつらい。いまどきのホームレスは残飯は食べません。風呂にも入って身ぎれいにして外食できるようにしているんだよ」
東京都出身で路上生活歴は約17年。建設現場で10歳サバを読んで62歳まで働いていたが、年を重ねて通用しなくなったという。
「この年だからあと何年生きられるか。いまさら自立支援センターに入る気にはなれないよね。地球温暖化でも東京の冬は寒い。段ボールや寝袋があっても、夜中は寒すぎて寝つけないときがあり、じっとしていられないからブラブラ歩いて身体を温めるんだ。何枚も重ね着しているし、親切な人からダウンジャケットももらったんだけどね」
















