離婚した妻と子どもがいるという。しかし、詳細を語ろうとはしない。年末年始はどう過ごすつもりなのか。
「食べるのに精いっぱいだよ。年末は露店の周囲で掃除のアルバイトをする予定で、毎年カップ麺の年越しそばが提供されるんです。NHKの紅白歌合戦なんて何年も見ていないな。記憶にある出場歌手はサブちゃん(北島三郎)とか坂本冬美。正月のおせち料理やお雑煮はなし。そんなことまで考える余裕はないよ」
今の生活を続けているのは、仕事を頑張らなくていいから
路上生活の思い出は、
「中華そば店の料理人が手作りのお弁当を差し入れてくれたことがあった。もう、本当にありがたくて涙が出ましたね」と振り返りながら、空き缶を潰す手を止めた。
墨田区のホームレス・黒木翔太郎さん(33=仮名)は路上生活歴5年。外見はホームレスに見えず、何時間も公園のベンチに座ってスマホで動画を見ていた。声をかけるとイヤホンを外して「路上生活しています。僕の話なんかつまらないですよ」と言う。
「夜中以外は一日中ベンチで過ごしています。もちろん寒いですよ。日中は図書館などで過ごすホームレスもいますが、僕はなんとか耐えられるのでここにいます。座りっぱなしなのでお尻は痛くなりますけど、ハハハ。高齢のホームレス仲間は“冬はトイレが近くなるからたいへんだ”とこぼしていました。
足腰が弱いホームレスは寒さで行動範囲が狭くなり、冬場は生活パターンが崩れやすいそうです。僕は夜になると寝袋に入りますが、品質が向上しているからけっこう暖かいですよ」(黒木さん、以下同)
身の回りでホームレスが減ってきたことは実感しているという。20代の仲間らが生活保護を受けて定住先を持つようになったほか、体調を崩して入院した人もいる。
千葉県出身の黒木さんは週に1回か2回は清掃関係の仕事をしており、所持金がゼロになることはない。
「都内の“炊き出し情報”は把握できるため、普通は行くんでしょうが、僕は動くのが面倒くさいので行きません。性格が変わっているんですよ。みなさんと同じで物価高には苦しめられています。
カップ麺や菓子パンなどはコンビニで買いますが、弁当はコンビニでは買いません。弁当チェーン店のほうがずっと安くてボリュームもありますから。外食ですか?さすがにできませんね」
稼いだ金で優先するのはタバコと酒代。スマホを所持しているため情報入手には困らない。年末年始の予定は決めていないが、路上生活をしていない友人と飲み会をしたり、先輩から忘年会に誘われて参加した年もある。
「今年はどうなるか、まだわかりません。こういう生活を続けているのは、仕事を頑張らなくていいし、目上の人に気を使わずに済むからです。物価高のほかは特に不満はありませんね。いまは知り合いのホームレスが風邪をひいているのでそれが心配です」
寒空の下、看病してくれる人がいるわけではなく、病院へも行かず、風邪薬を飲むのも難しい。暖かくして寝ることもできないだろう。別の場所で、ブルーシートのテントの中にいた男性ホームレスに取材を申し込むと、
「そういうのはいい。話すことないから帰ってよ」
と、けんもほろろだった。ひと目でわかるホームレスがいる一方、見分けがつきにくくなったホームレスがいることも確か。寒さなどで命の危険を感じたら、ためらわずに声をあげてほしい。

















