ちなみに本作の中には梅谷が映画『ショーシャンクの空に』のポーズをまねる場面があるが、これは宮島さんの学生時代に重なる描写だそう。

これで成瀬シリーズは終わることができる

友達にすすめられて学生のころに『ショーシャンクの空に』を見た記憶があるんです。私のまわりだけだったのかもしれないですが、なぜか京大生ってこの映画がめっちゃ好きなんですよね(笑)

 簿記ユーチューバーとの出会いによって簿記の勉強を始めたり、達磨研究会に参加したりと、どの物語からも成瀬が成瀬らしい学生生活を送っていることが伝わってくる。

 その中でも週刊女性読者世代が共感するのは、母親の美貴子の視点でつづられる『そういう子なので』かもしれない。成瀬がローカル局のテレビ番組『ぐるりんワイド』に出演することになり、美貴子はその取材を通して娘と自分の人生を振り返っていく。

実は、この話は6編の中でいちばん最後に書いたものなんです。もともと美貴子がアルバイトをする話を書いていたのですが、一冊にまとめる段階で別の物語にしたいと思い、書き直しました。小説は書いた分だけ少しずつうまくなると思っていて、その点では、自身でいちばんの成長を感じられる話だと思っています

 幼少期からブレることなく自身の思考を貫き、カリスマ的な存在ともいえる成瀬だが、美貴子は特別な子だとは思っていない。

私自身、成瀬が特別にすごい人だとは思わないんですよね。ひとりの人間として見たときの成瀬は、美貴子と同じく“そういう子なので”という印象なんです

 最終話の『琵琶湖の水は絶えずして』は、びわ湖大津観光大使を務める成瀬が、ある事情によって幼なじみの島崎 みゆきに代役を頼む場面から始まる。島崎の視点を通してこれまでのシリーズの登場人物の近況が描かれ、成瀬の物語は多くの希望を残して幕を閉じる。

懐かしい人たちがオールスターで出てくる話にしたかったですし、成瀬がこれまで歩いてきた道を振り返るような総集編的な一編にしたいとも思いました。自分で書いた作品ではありますが、よく収まったなぁと感じています

 宮島さんの中でいちばん、印象深いのはラストの成瀬と島崎の会話後の一文だという。

この一文を書けたとき、“やっとたどり着いた”という気持ちになったんです。これで成瀬シリーズは終わることができると思いました