安青錦“まさかのチョイス”

「安青錦の取り口は、姿勢を低くして自分の頭を相手の腹につけるスタイルで、これはいわゆる“食い下がり”と呼ばれるような、本来は防御の体勢なのです」

 お互いのまわしをつかみ、身体を密着させる“四つ相撲”とも、相手を土俵外に押し出す“突き押し相撲”とも異なるスタイルだが、安青錦はこの食い下がりの体勢で勝利を重ねている。

「安青錦は食い下がった状態のまま、止まらずにどんどん前に出ていくという、攻め続けるスタイルで勝ち星を重ねているんです。あえて言うならば“食い進む”というのでしょうか。この独自の戦法での快進撃には、あっけにとられています」(やく氏、以下同)

 一方で弱点もあるようだ。

「彼は場所ごとに3敗程度していますが、そのほとんどが、相手に上体を起こされた状況でした。しかし、安青錦が今の“食い進む”相撲に磨きをかければ、より負けにくくなるでしょう」

 やく氏も横綱安青錦の誕生を待ち望んでいるという。

「かつて国外の力士が活躍していた時期は、日本人力士の活躍を望む声がたくさんありましたが、安青錦に関しては排他的な意見が全然ありません。むしろ多くの日本人が彼の横綱昇進を求めているようにも思えます。もちろん、侵攻を受けているウクライナ出身というドラマ性もあるのでしょうが、彼の人柄によるものも大きいのでしょう」

 実際、安青錦の朴訥なキャラクターは人気に一役買っている。

「基本的に礼儀正しいのですが、九州場所の初優勝後のインタビューで“今夜は何が食べたいか?”と尋ねられた際“とりあえずラーメン食べてから考えようかなと思います”という珍回答で沸かせました。

 日本相撲協会の公式サイトに掲載されているプロフィールでは“好きな歌手”に河島英五さんを挙げ、まさかのチョイスも話題になりました」(前出・スポーツ紙記者)

 河島さんは『酒と泪と男と女』や『時代おくれ』などで知られる昭和から平成にかけて活躍したシンガー・ソングライター。安青錦が生まれる前の'01年にこの世を去っているが、なぜ安青錦は河島さんを好きになったのか。河島さんの実娘である河島あみるさんに話を聞いてみた。

「もともと、力士の方は父の歌を好きになってくれる人が多いようなんです。朝青龍さんはモンゴルにいたころから父のファンで、横綱に昇進して間もない'03年3月に父の墓参りがしたいとわが家を訪ねて来てくださいました。それを知った白鵬さんは“自分も英五さんを好きなのに”と不満を漏らしたとも聞いています(笑)。父の男らしい、不器用な歌が勝負の世界に生きる方々に響くのかもしれません」