子どもの可能性を広げる「ウルトラ・ユニバーサル野球

 ベッドに寝たままでも参加できる大会が「ウルトラ・ユニバーサル野球大会」と名付けられ、2023年に第1回大会を開催。2チーム、計13人による1試合のみだったが、内多さんも実況担当として参加。本物の球場さながらのアナウンスで、ネットでつないだ会場を沸かせてひとつにし、選手や家族の笑顔を引き出した。

 その後、大会は第2回、第3回と回を重ねるごとに規模を拡大。難病や重度障害のある子どもたちに加え、きょうだい児も参加し、選手登録者は130人を超える。大会にはプロ野球出身者がゲストとして登場するなど、注目も高まっている。

 そして現在、内多さんは第三のステージへ。「もみじの家」を定年まで勤め上げたあと、2025年に一般社団法人を立ち上げ、現在は「ウルトラ・ユニバーサル野球」をさらに盛り上げるべく、その運営を中心とした活動に力を入れている。

ありがたいことに試合数が増え、1人で実況するのは限界が近づいています。将来的には、WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)のような世界大会を開催したいですね」

内多勝康さんが2013年にキャスターとして担当した『クローズアップ現代』のスタジオ
内多勝康さんが2013年にキャスターとして担当した『クローズアップ現代』のスタジオ
【写真】寝たままでも参加できる「ウルトラ・ユニバーサル野球」大会

 これまでスポーツをしたことのなかった子どもが、自分の力でバッティングをする。チームで目標を達成する喜びや、負けて「悔しい」と感じる気持ちを知る機会にもなっている。こうした経験は、子どもたちにとって、かけがえのないものだ。

 内多さんは、野球を通じて楽しい時間を過ごすだけでなく、それらの体験が子どもたちの未来へとつながると考えている。

「視線入力でパソコンを使いこなせるようになると、意思表示やコミュニケーションの手段が広がるうえに、将来の就労の可能性も広げます」

 医療の進歩が子どもたちの命をつないだように、テクノロジーの進化は、未来を切り開く力を持つ。

まずは、医療的ケア児の“今”を知ってもらうことが大切だと思っていますが、そこで止まらず、可能性の大きさも伝えていきたい。彼らの日常が、私たちの日常と地続きである社会を目指したいですね。環境や支援が整えば、社会に参加できる人はもっと増えるはずです。また、地域で格差が生まれないことも重要だと考えています」

 同じ社会に生きる仲間として、共に働き、共に野球を楽しむ日々。ベッドの上で“バットを振る”子どもたちの姿は、その未来がもう始まっていることを教えてくれる。


取材・文/小林賢恵