綱取りの安青錦、序盤で痛恨の2敗も期待が集まる理由

 今場所で初の「綱取り」に挑んでいた大関・安青錦は、西前頭2枚目の美ノ海に寄り倒されて2勝2敗に。安青錦は立ち合いから突いて出て一度は土俵際まで押し込んだものの、相手に右に回り込まれていなされると流れが一変、もろ差しを許し体を預けられて倒れ込んだ。

 取組後、安青錦は「また切り替えて、明日から頑張りたいです。ありがとうございました」とだけ話し、それ以上の質問には答えず。これまでは負けた後でも淡々と対応していただけに、悔しさを隠せない様子がうかがえた。

「綱取り?それは厳しいでしょうね」と語ったのは昇進に関わる審判部の粂川副部長(元小結琴稲妻)。

 年6場所制となった以降、誕生した横綱は31人だが、昇進直前に5日目までに2敗した力士は朝汐1人ということもあり、早くも正念場というわけだ。

 東スポWEB・秀ノ山親方(元大関・琴奨菊)の評論によると、「慌てて攻め急いでしまっている印象がある。これも試練。綱取りの場所では心技体、あらゆるものが問われる。特に大事な部分は精神面。いったん綱取りへの思いは胸の奥にしまって、勝っても負けてもクールな安青錦本来の姿を取り戻してほしい」と評し、エールを送った。

 ファンからも《一気に駆け上がるのもいいけど、苦しい時期を乗り越えて昇進する方が大横綱になれそう》《勢いだけで上ることは考えないで挑んで欲しい》《あきらめず残りすべて勝つつもりで頑張ってほしい》と期待の声が相次いだ。

 日本の相撲ファンは長年、日本人横綱の誕生を待ち望んできた。しかし、ウクライナ出身で2022年のロシア侵攻後まもなくして来日し、異国の地で奮闘する安青錦に対しては「横綱になってほしい」という声が国籍を超えて多く寄せられている。

「安青錦関の話し方は、師匠の安治川親方にそっくりとも言われて人柄の良さや勤勉な姿が話題になりましたよね。ポカリスエットの新CMでも起用され、ファンの間で『可愛い』『癒される』など好評でしたよね」(前出・相撲ライター)

 綱取りは厳しいと言われる現状だが一部では、失敗がむしろ本人のためになるという見方もある。横綱は「負けてはいけない存在」であり、一度その地位に就き、負けが続けば引退という厳しい立場となる。挫折を知らずに一気に駆け上がるよりも、負ける悔しさやスランプを経験し、精神面でより強くなってから昇進する方が息の長い大横綱になれるという考え方である。

 春場所はまだ序盤。勝敗の行方だけでなく、若き大関の成長の過程そのものに、多くのファンが注目している─。