漫画を描いて、尼僧として生きる

 探し続けた人生の答えは、仏教にあると確信する。大学を中退し、高野山大師教会本部にて得度受戒。しかし、それだけでは何もわからず戸惑う日々が続いた。

「加行という百日間の修行を行い、伝法灌頂を受けないと僧侶として一人前になれません。むしろそこからが学びのスタートです。密教を知るため修行をしたかったのですが、夫には反対されました。それを押し切ってまで行うのは誰も幸せにならないので、今はそのときではないのだろうと。同時に、仏教はこんなにも面白いのだから、漫画にして伝えられたら興味を持つ人もいるに違いないと思い、まずはしっかり漫画家を目指そうと決意しました

 複数の漫画家のアシスタントを務めながら作品を描き続け、1989年にギャグ漫画の登竜門「赤塚賞」でトップ受賞。現在まで漫画家として活動を続けている一方、尼僧としては近くの寺で役僧を務めた。そして、2006年には百日間の修行に励み、阿闍梨(高位の僧侶の称号)になった。

「高野山大学で修行できることになったのですが、夫は身体への負担を心配し反対。でも当時7歳の娘が“受けたいなら行ったほうがいいよ”なんて言ったものですから、主人も自分の仕事が難しい局面の中でも、送り出してくれました」

 朝夕の勤行、下座行、数kmにわたる諸堂参拝、数時間かかる修法を3回行う。

「46歳での修行でしたから、それはもう大変。知力も体力も使い果たし、極限まで追い込まれるんです。足は震え、目は回り……。それでも身体は勝手に動いて印を組み、真言を唱えている。自分が自分でない感覚になりました。密教は本当に奥深く、やめろと言われてもやめられないありがたさ。学びはずっと続きます」

悟東あすかさん…高野山真言宗尼僧、漫画家。1984年、高野山別格本山西禅院より得度。2006年、高野山大学加行道場大菩提院にて加行成満。同年伝法灌頂授了。2007~2009年、高野山大学にて中院流一流伝授受了。著書は『心のフタの開き方』(徳間書店)など多数。
悟東あすかさん…高野山真言宗尼僧、漫画家。1984年、高野山別格本山西禅院より得度。2006年、高野山大学加行道場大菩提院にて加行成満。同年伝法灌頂授了。2007~2009年、高野山大学にて中院流一流伝授受了。著書は『心のフタの開き方』(徳間書店)など多数。
【写真】尼僧で漫画家、悟東あすかさんが描く『心のフタの開き方』
悟東あすかさん…高野山真言宗尼僧、漫画家。1984年、高野山別格本山西禅院より得度。2006年、高野山大学加行道場大菩提院にて加行成満。同年伝法灌頂授了。2007~2009年、高野山大学にて中院流一流伝授受了。著書は『心のフタの開き方』(徳間書店)など多数。

取材・文/植田沙羅