あたりまえの日常は健康であってこそ

 復帰した野村さんを待っていたのは、多くのリスナーからの祝福の言葉だった。

「公表したときも、番組のX(旧Twitter)やメールに励ましの言葉をたくさんいただいたのですが、復帰のときにも膨大な数のメッセージが届きました。読みきれなかったメールは帰りの電車の中で読ませてもらったんですが、泣きそうになりましたね」

 野村さんは、阪神・淡路大震災をきっかけに、東日本大震災、熊本地震、能登半島地震と、被災地に足を運び、現地の声を伝えてきた。

「岩手で、九死に一生を得た旅館のおかみさんと出会い、親しくさせてもらっているんですが、『人助けをするにも、自分が生きていないと』という言葉が、すごく心に残っています。自分の身を守り、生活を守ることの大切さを教えられました

 ラジオは、働きながら、家事をしながら聴いている人も多い。“日常に寄り添うメディア”だと野村さんは言う。

「だからこそ、リラックスしたおしゃべりで、あたりまえの日常をリスナーに届けたい。被災地には、今後も来てほしいと言われれば、現場に行きたいと思っています。行ってみないとわからない景色や空気がありますから」

手術を終え、文化放送の生ワイド番組『くにまる食堂』最終回後、リスナーから届いたメールに涙しながら読む野村さん
手術を終え、文化放送の生ワイド番組『くにまる食堂』最終回後、リスナーから届いたメールに涙しながら読む野村さん
【写真】がん判明後、ラジオの生放送に挑んだ野村さん

 現在は定期的に診察を受けているが、転移もなく経過は良好。仕事のない日は、孫の世話を手伝うなど、穏やかな日々を過ごしている。

「週に2、3日はウォーキングをして、身体を動かすようにしています。でも、お酒も飲んでいますよ。やっぱりそれが楽しみですから。ただ、プリン体ゼロのハイボールや赤ワインにしたり、少し気を使うようになりました。食事も塩分は控えめにしています

 がんを経験した今、病気との向き合い方にも思うところがある。

「昔とは違って、周囲にも働きながら治療を続けている人がいます。がんは怖い病気ですが、必要以上に恐れるものでもない。大事なのは“正しく怖がる”ことだと思うんです。人間ドックなど、定期的に検診を受けることの大切さを改めて感じました」

 病気が見つかる怖さから病院に行くのを避ける人もいるが、ずっと不安の中にいるより、治療の道を知ることのほうが大切だ。野村さんのように、ステージ3、4でも治療法が増え、悲観ばかりの時代ではなくなっている。

孫が大きくなったら、一緒に旅行に行って、お酒を飲むのが夢なんです。そのためにも、これからも“正しく怖がりながら”、日々を大事に過ごしていきたいですね」


取材・文/小林賢恵