出会わないための「基本対策」

 人里への出没には「学習」の側面もある。昨年、人里で食べ物を得た経験を持つ個体は、その場所への警戒心が弱まり、繰り返し出没する可能性がある。地域や個体ごとにクマの出没状況が異なるのはこのためだ。

 さらに、目撃情報の中には見間違いと考えられるケースも多い。黒い影や動く物体をクマと誤認する例もあり、情報の増加とともに不安が先行しやすい面もある。冷静に状況を見極めることも大切、と中下氏は話す。

 では、これからのレジャーシーズン、山に入る際には何に気をつけるべきなのか。

 ポイントはシンプルで、「クマとばったり出会わないこと」に尽きる、という。クマによる事故の多くは、不意の近距離での遭遇によって起きているためだ。

 まず重要なのは、行き先のクマの出没情報の事前に確認。現地で新しい痕跡、たとえば春であれば糞や足跡などが見つかった場合には、その周辺にクマがいる可能性があるため、無理に進まず引き返す判断も必要。

全国各地で出没が続くクマ。それはすでに“東京都内”でも…(写真はイメージです)
全国各地で出没が続くクマ。それはすでに“東京都内”でも…(写真はイメージです)
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 行動面では、複数人での行動に加え、会話や鈴、ラジオなどで音を出し、人の存在をあらかじめ知らせておくことが有効だ。特に注意したいのは、クマが活発に動く薄明薄暮の時間帯や、せせらぎで音がかき消されやすい沢や川沿い、クマが潜みやすい藪の中などである。

 春は山菜やタケノコのシーズンでもあり、人もクマも同じ“食べ物のある場所”に集まりやすい。その結果、お互いに気づかないまま距離が縮まり、思わぬ遭遇につながるケースが毎年起きている。

 さらに見落としがちなのが、食べ物やゴミの管理。人の食べ物の味を覚えたクマは、人里やキャンプ地に繰り返し現れるようになる。食べ残しやゴミの放置は、クマを引き寄せる原因になりかねない。必ず持ち帰ることが基本だ。

 中下氏は「クマは本来人間を避けて行動します。存在を過度に恐れる必要はないですが、油断は禁物」としたうえで、「適切な距離をとり、基本的な対策を押さえていれば多くのトラブルは防げます」と話す。クマがいる可能性を意識しつつ、しっかりと備えをしたうえで春のレジャーを楽しみたい。