2つめの理由

 2つめの理由は、徐々に強くなっていく主人公・木南の反撃。最初は夫に「力強い煮干しのダシに繊細な白みそを合わせるなんて、本当にセンスがないな、君は」などと言われても、ただ夜のキッチンでアルコールに逃げることしかできなかった。

 それが、高杉との出会いできちんと自分の意見が言えるようになり、最近では何か嫌味をいわれても聞き流すようになっている。逆にモラハラ夫だった中村がうろたえて、夫婦2人での食事に誘って大量のバラをプレゼントしたり、木南のご機嫌を取るようになってきた。

 さらに不妊治療に非協力的だったのが、自分から「一応俺も検査しておいた方がいいと思ってさ」と言い出す始末。しかし木南はそれを断り、友人たちにはもう不妊治療はやめたいという発言している。中村は全く形無しだ。さらに愛人の佐津川に妻のことを「何か分かったらすぐに知らせてくれ」と頼むなど、不倫相手に対してもかなり格好悪い。この立場逆転が痛快だし、今後も中村の権威失墜ぶりは楽しめそうだ。

 そして3つ目の理由は木南と高杉の恋の行方。

 木南は自分を犠牲にしても、高杉に意識を取り戻して瀧本のもとに戻るようにと告げる。ただし高杉の意識が戻れば、木南との記憶はなくなってしまうかもしれない。

 この木南の決意が切ないし、木南と高杉が非常に好人物だけに、視聴者もふたりには幸せになってほしいと自然に願い、ヤキモキしてしまうのだ。

 第5話ではついに、高杉が意識を取り戻し、キッチンから姿を消す場面で終わった。第6話からは第2章が始まるが、果たして高杉は木南の記憶を忘れてしまっているのか? 

 意識が戻った高杉の口から語られる事件の真相とは?

 前半は食わず嫌いだった人も、ぜひ一度見てみてほしい。個人的には、もし高杉が木南を忘れていても、味の記憶が2人を結びつけるカギになりそうな気がするが……?

古沢保。フリーライター、コラムニスト。'71年東京生まれ。「3年B組金八先生卒業アルバム」「オフィシャルガイドブック相棒」「ヤンキー母校に帰るノベライズ」「IQサプリシリーズ」など、テレビ関連書籍を多数手がけ、雑誌などにテレビコラムを執筆。テレビ番組制作にも携わる。好きな番組は地味にヒットする堅実派。街歩き関連の執筆も多く、著書に「風景印ミュージアム」など。歴史散歩の会も主宰している。