「本当に母親を大事にしていた」近隣住民の証言

 6畳2間の2DKの部屋は家賃約9万円。複数の鉄道駅に囲まれるエリアにあるものの、いずれも歩くには距離があり、地元住民はバスや自家用車を足に使うケースが目立つという。

 千代さんは専業主婦だったようで、夫の遺産を切り崩すなどして家計をまかなっていたとみられる。家賃の支払いが遅れたことはなく、電気・ガス・水道が止められた様子もなかった。

 同じマンションの70代男性はこう話す。

「息子さんは口数が少なく、挨拶もしない感じでしたけど、高身長でガタイがよくて、見ようによっては“いい男”。外出時はジャケットを羽織るなど身なりが清潔できちんとしていましたね。朝出かけるときは穏やかな声で“行ってくるからね〜”と母親に声をかけ、部屋の奥から母親が応じる微笑ましいやり取りを見ました。

 母親のために、デパートで買ってきたようなちょっと上等なお惣菜やお弁当を持って帰宅することも。仕事に出かけていると思っていたんですが、いまは無職だったんですね。死亡届を出すと死を受け入れることになるって……うん、たしかにそういう人でしたね。母親を大事にしている人でした」

 自宅前には母親が使っていたとみられるカートや複数の杖があった。さらにチューハイやハイボール、ワインをスーパーで購入したレシートが落ちていた。今年4月25日夜の印字で、千代さんが死亡したとみられる時期と合致する。

「いくら母親の死を受け入れたくなくても、室内はご遺体の腐敗臭がひどくなっていたみたいですよ。息子さんは年齢よりかなり老けてみえて、千代さんと夫婦だと勘違いしていた人もいるくらいです。

 細面で切れ長の目にメガネをかけ、鼻の高い男性でした。こんなことになって胸が痛いです。見に行ってあげるか、話を聞いてあげればよかったと思います」(前出のマンション関係者)

容疑者宅前に落ちていたレシート。近隣のスーパーでお酒を購入したようだ。母との別れの悲しみを、お酒で紛らわせた夜もあったのだろうか…
容疑者宅前に落ちていたレシート。近隣のスーパーでお酒を購入したようだ。母との別れの悲しみを、お酒で紛らわせた夜もあったのだろうか…
【写真】お酒で気を紛らわすことも…?自宅前で見つかったレシート

 遺体の腐敗臭が室外に漏れることはなかったが、発見当初は玄関ドアの隙間に鼻を近づけると死臭がしたという。

 前出の70代女性は言う。

「親孝行な息子さんです。1年ぐらい前までは母親と散歩する姿を何度も見かけました。手はつなぎませんが、隣に寄り添って。買い物の荷物を持ってあげたりね。60歳の男性が“母親の死を認めたくない”と公言することには違和感があるかもしれません。

 でも、ちょっと気持ちはわかるじゃないですか。ずっと2人で暮らしてきたわけですし、本当に母親を大事にしていましたから。“ああいうやさしい息子さんがいて千代さんも幸せだね”と話していたくらいです。放置したのはよくなかったけど、私はかわいそうに感じてしまいます。寂しかったんだろうと思います」

 動かなくなった母親を前に、容疑者は2〜3週間、何を思ったのだろう。遺体は母の日の直前に見つかった。花を手向ける機会はあっただろうか。