1973年、フォークデュオ・グレープとしてデビュー。'76年にソロ・シンガーとして活動を開始以降、ソロ通算46作のシングル、自身通算51作のオリジナルアルバムを発表してきた。数字だけを見れば偉業だが、本人にとっては通過点に過ぎないようだ。

懐かしがって昔の歌に浸っている姿はあまり見たくない

何十作を作っても発見の連続なんです。もう少しこうしたほうがよかった、という気づきが毎回あったり。けれど、だからこそ次に行ける。もし“いいアルバムができた”と満足してしまったら、僕はそこで終わりなのかもしれません

74歳となった今も、第一線で活動を続けるさだまさしさん 撮影/佐藤晴彦
74歳となった今も、第一線で活動を続けるさだまさしさん 撮影/佐藤晴彦
【写真】泣けて役に立つ! さださんが主題歌を担当する「終活映画」

 数々の名曲を生み出してきたさださんだが、過去の作品を振り返ることはほとんどない。

昔の歌は聴かないんです(笑)。やっぱり、常に新しくいたいから。僕の歌を聴いたり、歌ったりしてくれるのはうれしいなとは思いますよ。けれど、発表した時点で、もう自分のものではなくなる。

 多くの人に育ててもらって、スタンダードになっていく。それでいいと思っています。それに、今の自分が、懐かしがって昔の歌に浸っている姿は、あまり見たくないんですよね

 創作に対する姿勢の原点にあるのが、人生訓としている文芸評論家・山本健吉氏の言葉だ。

若いころに作った自分の歌に心ひかれて、“こんな歌をまた書きたい”と思ったら、その瞬間に引退しなさいと言われたんです。自己模倣は芸術の死だ、と。誰も歩かない道を歩きなさい、と。その言葉は非常に大きいですね

 父親のように慕っていた山本氏には鼓舞されてきたという。一方で、長いキャリアの中ではスランプのようなときもあったそうだ。

歌ができなくて、作る歌が全部つまらない、という時期もありました。“これは最低のアルバムだな”と思ったものも4枚くらいあります(笑)。でも、後で冷静になって聴くと、それなりに小さな扉は開けているんですよね。ここは新しいな、ここは挑戦しているなとわかるので