「昔からの付き合い」に縛られなくていい
「昔からの付き合いだから」と、人間関係を見直せない人は多い。学生時代からの友人、職場の同期、ママ友……付き合いが長いほど、「今さら距離を置くなんて悪い」と感じやすいものだ。
だが、和田先生は、「過去に助けられたこと」と、「これからも無理して付き合い続けること」は別問題だと話す。若いころは気が合っていても、年齢とともに価値観は変わっていく。
会うたびに愚痴や悪口ばかりだったり、自慢話ばかりだったり─。そんな相手に気を使い続けていると、気づかないうちに心がすり減ってしまう。だからこそ60代からは、「誰と一緒にいると心地いいか」を大切にしていい時期。無理な付き合いを続けるより、自然体でいられる関係を残していくことのほうが、これからの人生を穏やかにしてくれる。
「もちろん、絶縁をすすめているわけではありません。返信を急がない、会う頻度を減らす、距離感を変える。それだけでも、人間関係のストレスはかなり軽くなりますし、“全部に応えなくていい”と思えるだけで、気持ちはラクになります。つまり老後ほど“いい人”をやめたほうがいいということです。
日本人は特に、空気を読む、波風を立てない、ということを重視しがちです。しかしその結果、自分の気持ちを後回しにして疲弊してしまう人も多いのです」
60代以降は、体力も時間も有限。だからこそ、嫌われない努力よりも、自分が居心地よくいられる関係を優先するのが理想的だ。
「多少わがままなくらいでちょうどいい。まじめな人ほど、他人に気を使いすぎる傾向があります。自分の気持ちを優先できる人のほうが、結果的に機嫌よく過ごせる。そして、機嫌のいい人の周りには、自然と居心地のいい人間関係が残っていくのだと思います」
人間関係を整理する際、多くの人が不安に感じるのが「孤独」。しかし和田先生は、一人でいることと孤立は違うと指摘する。
気を使う相手に囲まれてストレスを抱えるより、一人で気楽に過ごす時間があるほうが、精神的には安定する場合も多い。60代からは、「誰かと常につながっていなければ」という発想を手放していいのだ。
さらに、古い人間関係を整理すると、新しい出会いが入ってきやすくなる面もある。
趣味のコミュニティー、地域活動、習い事。会社や肩書を離れたあとだからこそ、“素の自分”でつながれる関係が生まれることも。
「推し活もいいですね。共通の話題を通して盛り上がれるのは刺激にもなって、若返り効果もあります。人生100年時代といわれる今、60歳は終わりではなく、新しい人間関係をつくり直せる年代でもあるのです。最近はインターネットやAIもありますから、活用して世界を広げるチャンスがたくさん広がっています」
当たり前になりすぎていた、夫婦や親子の関係も一度見直してみよう。
「定年後のパートナーとは2人の時間が長くなり関係が深まる一方で、相手の言動が新たなストレスや体調不良の原因になります。夫婦間でも互いの生活を尊重すること。
そしてこれまで世話を焼いてきた子どもには独立する年齢になってもつい口を出したくなったり、甘えたりしてしまう親が多いので、互いに自立をし、良好な関係をつくっていきたいものです。夫婦も親子も、困ったときに助け合うくらいがちょうどいいんですよ」
コミュニケーションに気を使い続けることは、脳にもストレスだ。しがらみ、責任感、世間体や見栄……60代からは我慢の人間関係を減らし、残りの人生をムダにしない時間の過ごし方を肝に銘じたい。

















