そんな本木が、世界的な評価へとつながった作品がある。ひょんなことから遺体を棺に納める“納棺師”として働き始める元チェリストが主人公の映画で、2008年に公開された『おくりびと』だ。
同作で監督を務めた滝田洋二郎氏は、撮影現場での本木をこう振り返る。
「本木さんは仕事にのめり込むタイプ。劇中でチェロを弾く場面があり、翌日に撮影があっても、ホテルで夜中までチェロの練習をして、部屋で休んでいた僕のところにも音が聞こえてきました。納棺の手際を美しく見せるため、助監督やスタッフを練習台に借り出すのですが、いつまでも続けていましたね」
撮影でも、簡単には納得しなかった。
「僕が撮影でOKを出しても本木さんは“本当ですか?”と聞いて、再撮影をお願いしてきたり。彼は答えが出ないことを楽しむというか、それを信じようとしているというか。納得するまで考え続けるスタイルなのでしょう」(滝田氏、以下同)
義父の内田裕也さんに似ていた
本木の義父である内田裕也さんが企画・主演した1986年公開の映画『コミック雑誌なんかいらない!』の監督も手がけており、通じる点があるという。
「裕也さんと本木さんは全然キャラクターは違うけれど、自分の感性しか信用しない、思い込んだらコレ!というところは近いですよね。自ら動いて自ら悩んで突き進んでいく。義理でも親子って似てくるんだな、と思いましたよ」
細かい所作にまでこだわり抜いた本木。それが実を結んだのか、『おくりびと』は第81回アカデミー賞外国語映画賞を受賞。国内外の映画賞で103冠を獲得した。
『おくりびと』プロデューサーの中沢敏明氏は、本木の功績をこのように語る。
「本木さんはご自身が企画者でありながら、監督やスタッフに花を持たせる方でした。しかし、ストイックな努力で役を演じきった本木さんの存在があってこそのアカデミー賞だったと、私は思っています」
賛辞は尽きない。
「役への向き合い方はもちろんですが、佇まいの美しさという意味でも唯一無二の存在です。年齢を重ねても、そのレベルをずっと保ち続けている。それが彼のすごさだと思います」(中沢氏)
還暦を迎えた本木。その真っすぐで凛としたまなざしは、また新たな役へと向けられている─。

















