自宅の庭園にソテツを植え、温室ハウスや大きな飼育かごを設けるなどトロピカルムード満点の家だった。「あれは寅ちゃんの趣味」と70代の知人男性は言う。

容疑者は「常識がある人」

寅年の寅夫さんだから愛称は“寅ちゃん”。ちょっと小太りでね。農業関係の仕事に長く従事し、年1度の地域のゴミ拾いイベント『クリーン大作戦』にもきちんと出ていました。常識がある人だよ」(知人男性)

坂田武男容疑者が電話ボックスから110番通報後、身柄を拘束されたとみられる瞬間。パトカーが5、6台出動し、画像奥のパトカーの後部座席に乗せられたようだという。(読者提供)
坂田武男容疑者が電話ボックスから110番通報後、身柄を拘束されたとみられる瞬間。パトカーが5、6台出動し、画像奥のパトカーの後部座席に乗せられたようだという。(読者提供)
【写真】草木が生い茂り、空き缶が山積み…荒れ果てた容疑者の自宅

 父子宅そばの田んぼの脇には用水路があり、ザリガニが捕れるという。

私が小学生だった5、6年前、あの家のそばでザリガニを捕まえていたら、おじいちゃんが窓から顔を出して“うちに金魚がいるからあげようか”と言ってくれたんです。庭に井戸があって赤い金魚がたくさん泳いでました。その中から2、3匹もらって帰ったんです」(地元の10代女性)

 寅夫さんも年を重ね、4、5年前にはシニア向けの電動カートに乗って外出する姿が目撃されるようになった。デイサービスの車が頻繁に止まるようになり、最近はすっかり姿を見かけなくなっていたという。

 一方の武男容疑者は、長らく仕事をしていない様子だった。

でも挨拶をしたら会釈は返してくれる。十数年前まではトラック運転手をしていたんじゃないかな。父子宅から朝4〜5時くらいにトラックのエンジン音が聞こえてきて、朝早くから出勤する様子がうかがえました。しばらくエンジン音も聞かないし、働いていないんだろうとは思っていました」(前出の知人男性)

 武男容疑者は小柄で白髪交じりの短髪。Tシャツにジーンズなどラフな格好で、トレードマークは黒っぽい色のキャップだった。ここ1、2年の行動は少し奇妙だった。

タイヤの太い自転車で昼も夜も走っていたんだよ。真夜中の2~3時でも自転車で徘徊するから、近所では気味悪がる人もいた。それと、近くの運動施設の裏にある水道から、ポリタンクに水を入れて持ち帰るのを見たことがある。なんでだろうと思ったね。飲み水や生活用水を調達していたんだろうか……」(近所の50代男性)

 犯行現場となった父子宅には警察の規制テープが張られていた。庭は雑草などが生い茂って荒れ果てている。植木の隙間からのぞく物置にはチューハイの空き缶が山積みにされ、一部は崩れ落ちていた。

昔は寅夫さんがしっかり整備していたから、きれいだったよ。あんなふうに草ボーボーになり始めたのは2、3年前かな」(別の70代男性)

 犯行の背景に何があったのかなど、動機の解明は捜査の進展を待つほかない。ただ、武男容疑者は自宅では寅夫さんの生活を介助していたとみられ、庭まで手が回らなかったようだ。

 スマホもなく、水道も止められ、缶チューハイを飲むのが日々の楽しみだったのか。寅夫さんが寝入ったあとの深夜、現実を忘れて自転車に乗る時間が唯一の“息抜き”だったのかもしれない。