かたせ梨乃の潔い演技

 実は白石さんは61歳で、周囲の人間にもかたせの姿で見えていたのだが、かたせの脳内でだけ、林の姿に変換していたのだ。この演出は見事だった。最初からもう一度見返すと、林が演じていたシーン全部にかたせがダブって見えてしまう。
 
 かたせは自室でフリフリの衣装を着て、松本伊代の『センチメンタルジャーニー』を「美子はまだ、16だから~♪」と振付つきで熱唱。足元や手だけのアップから徐々に全体が明らかになっていく時の心境は「怖いけど見たい」そのものだった。

 かたせといえば若い頃は映画『吉原炎上』や『極道の妻たち』などでスケールの大きな演技を披露。近年は『あさこ・梨乃・○○ 3人で5万円旅』など、バラエティでも飾らない一面を見せており、そんなかたせだから出来た潔い演技だと思うが、ここまでやった勇気に拍手を送りたい。

 そもそも白石美子はなぜ、こんな倒錯をするようになってしまったのか。その秘密を知る人物として柳ゆり菜、白石美子と対照的な名前の“黒岩美子”として夏樹陽子も出演が発表されており、非常に謎めいている。

 公式HPには、「純情という名の狂気」「ロマンティックホラー」「ありとあらゆる色恋仕掛け」などの言葉が見られ、かたせの暴走はますます加速していく模様だ。序盤からいきなり、目が離せなくなってきた。

古沢保。フリーライター、コラムニスト。'71年東京生まれ。「3年B組金八先生卒業アルバム」「オフィシャルガイドブック相棒」「ヤンキー母校に帰るノベライズ」「IQサプリシリーズ」など、テレビ関連書籍を多数手がけ、雑誌などにテレビコラムを執筆。テレビ番組制作にも携わる。好きな番組は地味にヒットする堅実派。街歩き関連の執筆も多く、著書に「風景印ミュージアム」など。歴史散歩の会も主宰している。