モラハラ夫に耐え20年で離婚

 表向きは「裕福で幸せな奥さん」でいたかった西崎さんは、モラハラ夫でも離婚はしたくなかったという。しかし20年間の結婚生活が終わったのは、夫がリストラされ、収入がなくなったことが大きな理由だ。

「『今まで俺が働いてきたんだから、今度はおまえが働け』と言われました。そこからパートを始めましたが、夫は家にいても家事を何ひとつしません。再就職もなかなか決まらず、家計が苦しくなっていき、ようやく離婚を決意したんです」

 離婚にあたって、夫は「自分は何も悪くない」と、財産分与も養育費もなしという条件を出し、離婚協議は2年に及んだ。親族を交えて話し合いをし、ようやく合意ができたが、離婚届を出した日に息子が号泣しながら語った言葉は忘れられない。

「『俺は本当にあの家が嫌だった。パパもおかんも自分のことだけ。相手が悪いと責める話しかしてない』と言われました。息子につらい思いをさせていたことに胸が痛くなりました」

 振り返ると西崎さん自身も、結婚生活への反省点が多いという。

「幸せにしてもらえるのが当たり前と思い込んで、相手を思いやる気持ちが欠落していたと思います。カチンとくるようなことを言って、彼がますます頑なになってしまったという面もあります。専業主婦でいられたからこそ、『片づけ』というコンテンツで生きていけるようになったんです。今となっては元夫には感謝しているところもあります」

離婚後、西崎彩智さんはヨガスタジオの受付の仕事を始めるも時給は800円。財産分与も養育費もなかったため、何度か電気が止まったり貴金属を質屋に持っていったことも
離婚後、西崎彩智さんはヨガスタジオの受付の仕事を始めるも時給は800円。財産分与も養育費もなかったため、何度か電気が止まったり貴金属を質屋に持っていったことも
【写真】自己肯定感のアップにもつながる“西崎流”片づけ講座

 離婚前に始めたヨガスタジオの受付の仕事は時給800円。その後、西崎さんは店長を任されるまでになったが、手取りは月17万円ほどだった。

「自宅だけはなんとか夫から譲ってもらえましたが、生活費、食費、学費、住宅ローンの支払いがあり、私の給料だけではやっていけません。電気も2回止まりました。息子には『振り込みを忘れただけだから』とウソをつき、持っていた貴金属を質屋でお金に換えたこともあります。見かねた父が仕送りをしてくれることもありました」

 自転車操業のような生活から抜け出すためには、収入を上げるしかない。しかし、ずっと専業主婦だった自分に何ができるのかわからず、悶々とする日々が続いた。そんなある日、フリーペーパーを見て、コーチング講座の広告記事が目に留まる。

「コーチングを学んで3か月で100万円以上を売り上げた人のインタビュー記事が載っていたんです。最初は『そんな簡単にうまくいくなんて怪しい』と思ってゴミ箱に捨てたのですが、どうしても気になって。ゴミ箱からそれを拾い直して、説明会に参加することにしたんです」

 説明会で「何もない自分の価値を自分でつくっていく」という考え方を聞き、ここから西崎さんの人生が大きく動いていく。

「結婚生活で『おまえには何の価値もない』と言われ続けてきましたが、価値をつくれたらもっと自由になれるんだ!とワクワクしました。すぐにでも講座に飛び込みたかったけれど、問題は費用が30万円もかかることでした」

 月17万円でギリギリの生活をしている西崎さんにとって、30万円は大金だ。しかし、ちょうど父親から仕送りが届き、タイミングがぴったり合った。

「実は当時、愛犬が病気で30万円の治療費が必要でした。仕送りは治療費に充てるつもりでしたが、講座の振り込み期限の日にワンちゃんが亡くなってしまって。愛犬が自分の命と引き換えに私にチャンスをくれたのだと思いました」

 こうして受講が決まり、西崎さんは講師の言葉をどんどん吸収して、起業を目標にするようになった。中でも響いたのは「人は苦手なことは続かない。無意識で長く続けていることは才能なんだよ」という言葉だった。

「私はほぼ専業主婦の経験しかないけれど、自分が子どものころからずっと続けてきて得意なことは何かを考えると、『片づけ』だったんです。そうだ、片づけ方を教えるサービスをしよう!片づけられる人を増やしていこう!とそのときに決意したのがすべての始まりです」