被害者救済活動への応援と嫌がらせ
塚原さんが取材を受けるきっかけになった出来事がある。住所を教えていない父親から手紙が届いたためだ。差出人は違っていたが、遺産相続の話が書いてあり、連絡を取りたいとの内容だった。この手紙に刺激され、被害を語ることにした。
当初は匿名で、その後は実名で取材を受けた。そして、さまざまな活動を通じて、人脈を広げていった。こうした経験がある中で、性的虐待を含む虐待の被害者を救済する法人をつくった。「PCASA」の「P」は「PEACE」で平和、「CASA」はイタリア語やスペイン語で「家」を意味する。子どもが虐待を受けない、安心安全な家に生まれてほしいという願いを込めている。
藤田さんも実名、顔出しでの活動を応援している。
「活動を始める前、『実名で訴えようと思う』と、事前に相談を受けていました。私はそのとき、『やりなさい。どんどんやれ』と言いました。実際、被害に遭っている人は黙っていると思うんです。ですから、実名を出すのは社会にインパクトを与えるし、背水の陣でやっているということも見せることができるからです。そのためには、『何だって協力する』と伝えました」(藤田さん)
ただ、活動をしていると嫌がらせもある。先日は、レターパックで手紙と使用済みの性玩具が届いた。
「応援の手紙のように見えて受け取ったんです。でも応援どころか、父親を訴えるのはやめろという内容が書いてあったんです」
性的な侮蔑もあり、発作が起きた。塚原さんの夫はこの手紙が届いたときのことをこう振り返る。
「妻の活動を応援してくださる方がたくさんいる反面、よく思っていない人もいるのはわかっていました。いちばん先に頭をよぎったのは、エスカレートした犯人から、一緒に暮らしている娘と妻をどうやって守るかでした。まずは警察に届けを出さなければと思い、警察へ一緒に行きました。このままにしておきたくないので、何かできないかと模索しています」
そんな中、塚原さんは法人の活動資金を得るためもあり、派遣のアルバイトをしている。
「この前はクリーニングの仕分けの仕事をしてきました。顔バレもしているから、『どうしてここにいるんですか? こんなところで会えるとは思わなかった』と言われることもあります。『おたえ』などと呼ばれて、かわいがってもらっています」
そんな塚原さんは8人の子どもを出産した。乳幼児突然死症候群(SIDS)で亡くなった子がいるものの、7人の子どもを育て上げた。中には塚原さんの性被害を知っている子どももいる。
「うちの子には早く性教育をしようと思いました。私たちは親としてずっと守っていくからね、と言っています。でも、自分で自分を守れるようになってほしい。今は子どもの1人と一緒に3人暮らし。ほかの子はそれぞれ家族を持ち、自立しています。みんな近くに住んでいますので寂しくはない。子どもたちには仲良くしてほしい。最後はきょうだいしか残らないから」
7月29日、実父からの性的虐待の裁判が東京地裁で始まる。塚原さんの尊厳を取り戻してほしい。
<取材・文/渋井哲也>



















