この先も戦争はなくならないと考える

 伊東さんが綴った詞からは、現代社会への危機感もうかがえる。

「靖国神社にお参りすることを、政治的に捉える人がいる。おかしな話ですよね。靖国には太平洋戦争だけではなく、そのずっと前の戦争の戦没者の魂も祀られています。どこの国にも戦争の犠牲者はいて、その魂を悼むのは当たり前のことだと思うんです」

 壮絶な戦争を生き抜いた伊東さんの思いは、単純な思想や立場だけでは語れない。そして伊東さんは、この先も戦争はなくならないと考えている。

「何千年もの歴史の中で、地球上で戦争が起こっていない期間はないんです。今だってそうでしょう。世界の国々は自分たちが住む地球を壊してしまうような核兵器をつくって、それを使う、使わないなんてずっと騒いでる。こんなバカな話、落語にもありませんよ」

電線に引っかかった焼夷弾が近所の男性に落ちたときの様子を手振りを加えながら語る(撮影/佐藤靖彦)
電線に引っかかった焼夷弾が近所の男性に落ちたときの様子を手振りを加えながら語る(撮影/佐藤靖彦)
【写真】89歳とは思えない若さ!インタビューに答える伊東四朗さん

 どうすれば私たちは同じ過ちを繰り返さずにすむのか─。その答えは、戦争を体験した伊東さんの中にもまだ出ていない。

「政治家のみなさんは、一度私と同じように、戦火の中を家族で手をつないで逃げ回る経験をしてみたらいい。そこまでしないと、世界は変わらない気がしますね」

取材・文/植木淳子 撮影/佐藤靖彦(インタビュー)