米ぬか靴下から新商品「締め付けない靴下」を親子で開発!
みどりさんの参加によって、米ぬか靴下は着実に前へ向かって進み始めた。
みどりさんは、ECサイトの知識がゼロの状態から、講習会に出たり、直接運営元に問い合わせをしたりしながら、手探りで立ち上げに成功。特に楽天市場への出店効果は大きかった。
シリーズ累計10万足以上、楽天の敬老の日ギフトランキングで、'18年から8年連続で1位に輝くヒット商品が生まれたからだ。目玉となったのは、「締め付けない靴下」。
この靴下は、先代社長・勇一さんのリクエストから試作が始まった。もともと心不全を抱えていたため足首がむくみ、普通の人の1.5倍の太さがあった。
「俺の靴下を作ってくれ」という声に反応したのがみどりさん。そこから、鈴木さんとみどりさんとの親子共同開発が始まる。
「娘と試作品を作っては、父親に試着してもらって感想を聞く。要求が厳しいので、何度も修正を繰り返すうちに1年かかりましたが、苦労した分、いいのができました」(鈴木さん)
完成品をはいた勇一さんは、満面の笑みで「ベリーグッド!」を出す。
ふくらはぎ部分はゆったりしているが、ズレにくく、形状記憶する構造になっているため、数回さすると肌にフィットする点も気に入ったようだった。
「あんまり褒めない父が、このときは本当にうれしそうでした」(鈴木さん)
勇一さんはこう続けた。
「俺みたいに困ってる人がたくさんいるはずやから、これを販売したらどうや」
締め付けない靴下が完成したのは'17年のこと。勇一さんの言葉に励まされ、楽天などのECサイトで紹介すると火がつき始めた。
'18年には『羽鳥慎一モーニングショー』、'20年には『鶴瓶の家族に乾杯』で紹介された。近所の人が笑福亭鶴瓶に会い、「米ぬか靴下を作る面白い工場がある」とすすめたところ取材が決まった。工場に張られたポスターのコピー「この靴下 締め付けない、きつくない」が数秒映り込むと、問い合わせが殺到した。
従業員の西堀さんは、当時をこう回想する。
「最も忙しかったときは、電話の問い合わせがひっきりなしで、ネットはパンク寸前。出荷の梱包を社長と奥さん、みどりさんと4人で、毎晩10時前後までしていましたね」
会社に直接来る人もいて、中には四国の客もいた。
鈴木さんは「接客のため」と、会社の玄関にいちばん近い場所に自分の机を移動させた。西堀さんが語る。
「お客さんが来られたら、いちばんに“いらっしゃいませ!”と出ていって、お客さんの対応をしてくれる。普通、社長の机はもっと奥ですよね。正直言えば、社長がずっと隣の席なので、ちょっと窮屈ではあるんですけどね(笑)」
米ぬか靴下は、社長一人が進める事業という意味を込め、従業員から“社長の靴下”と、少し距離を置いた呼ばれ方をしていた。しかし製造が追いつかないぐらいの人気商品になるにつれ、社員の反応も“期待”に変わり始める。
工場長の井上雅司さんは、鈴木さんの情熱も、従業員の心を変えていった一因ではないかと言う。
「社長が、米ぬか靴下の商談から戻ってくると、従業員を集めてじゃなく、手の空いた従業員を呼び止めて、『今日の商談、すごく反応がよかったんや』とか、熱っぽく報告してくれるんです。反応がいまひとつだったときも、少ししょんぼりしながら。結果はどうあれ、われわれのモチベーションが上がります。どこの靴下会社でも自社ブランドを作りたいと思っているけど、なかなかできない。だから社長の情熱、すごいなと」
みどりさんも鈴木さんの商品に懸ける熱い思いが、営業先の人の心を動かす瞬間を現場で見たという。
「最初は小さい会社の社長が来はったな、お手並み拝見みたいな空気が漂うんですけど、社長が話し始めると引き込まれていくのが横で見ててもわかるんですね。前のめりになってくる。そういうシーンを1回じゃなくて何度も目の当たりにして、熱意って人に伝播するんだなって」



















