毒親殺しや冤罪のやりきれない背景

 女子刑務所に凶悪犯は少ないが、親を殺して服役していたJさんのことを最上さんは忘れられない。

『女子刑務所に2度入りました』(竹書房 税込み1430円)より(マンガ/小池恵子)
『女子刑務所に2度入りました』(竹書房 税込み1430円)より(マンガ/小池恵子)
【写真】エアコンがない猛暑、体調悪化でも診察を受けられない…女子刑務所の実態

「おとなしく、殺人という言葉からは遠い印象の人でした。彼女は3人きょうだいの長女として生まれましたが、母親から一人だけ疎外され、暴力を受け続けて育ちました。中学生のときは新聞配達で得た1か月5万円のほとんどを母親に搾取されていたそうです。

 高校卒業後は、睡眠2〜3時間で家事労働と仕事を強要され、留学する妹の費用まで全額負担させられることになったそうです。そのとき彼女は初めて抵抗し、気づかぬうちに包丁を握っていて……。母親を殺したとき、『これから自分は自由だ』という解放感に包まれたと聞きました」

 冤罪を訴えて服役していた人が、のちに無罪になったケースもあったという。

「その人は看護助手として勤務中、患者の人工呼吸器を外したという容疑で殺人罪に問われていました。取り調べ中、担当した刑事が時折見せる優しさにほだされ、『好きな刑事さんを困らせたくない』という一心で、誘導されるままに自白したそうです。

 私も取り調べ中のアメとムチを経験したので、彼女の気持ちはわかる気がしました。その後、彼女は警察の再捜査のために連れ出され、冤罪だったというニュースを報道で見ました」

 刑務所の中には外国人の受刑者もいて、覚醒剤取締法違反で服役しているケースが多かったそうだ。

「イスラム教徒のインド人受刑者と同室になった際、礼拝を欠かさず、ラマダン(断食)やハラール食などの戒律を守って生活していました。刑務作業中でも、刑務官に許可を取って礼拝を行っていて、刑務所内であっても宗教上の配慮がなされていました」

 受刑者の中には家族との縁が切れる人もいる。最上さんには、両親と夫、娘がいたが、面会に来てくれたのは父だけで、母は「孫に合わせる顔がない」と一度も来なかったそうだ。

「薬物で2度逮捕された女性は、娘さんの結婚を控えていました。でも娘さんは相手の親から『結婚を許す条件は、母親と絶縁すること』と迫られ、その女性は離婚届に判を押していました。家族であっても許されない、あるいは家族だからこそ許せない。その断絶こそが、本当の罰なのかもしれません」