余暇の時間は写経が大人気

 行き場のない高齢者が刑務所に入りたくて万引きを繰り返すという話も聞くが、刑務所生活は当然ながら過酷だ。最上さんも「絶対に戻りたくない」と話す。

「夏場はエアコンもなく、あるのは古い扇風機1台だけ。雑居房は過密で、熱気と湿気が尋常ではありません。夜は隣り合う他人の体温をダイレクトに感じながら、寝返りすら打てない狭小空間で夜を過ごさなければなりません。冬は寒いですが、防寒着もないので、下着を着込むしかないんです」

 塀の中では最も大切なもののひとつが「ちり紙」だ。

「刑務所のトイレにはトイレットペーパーがなく、行くたびに使う分だけちり紙を持参するのがルールです。支給されるちり紙はゴワゴワで質が悪く、2週間に1度、約500枚と決まっています。それを切らさないように使わなければいけません」

 排泄時だけでなく、鼻をかんだり、口元を拭いたりするときにも必要なので、計画的に使わないとすぐに使い切ってしまう。不足して追加申請すると厳しく注意を受けることになる。

「ちり紙1枚でも他人に渡すと不正授受で懲罰対象になります。過去にちり紙を喉に詰めて自死した受刑者がいたため、厳しく管理されているのです。私のちり紙が盗まれたこともありましたが、人によって折り方が違うので、犯人がすぐにわかりました。出所後に駅のトイレに入った際、トイレットペーパーが自由に使えて感動したのを覚えています」

 排泄といえば、多くの受刑者を悩ませていたのが便秘だ。食生活やストレス、運動不足など、刑務所には便秘になりやすい要因がそろっている。

「薬はよほどの場合でないともらえず、もらってもあまり効き目がないんです。食事で出される納豆が便秘解消になるとのことで、外国人受刑者が1年かけて納豆嫌いを克服し、食べられるようになったという話も聞きました」

『女子刑務所に2度入りました』(竹書房 税込み1430円)より(マンガ/小池恵子)
『女子刑務所に2度入りました』(竹書房 税込み1430円)より(マンガ/小池恵子)
【写真】エアコンがない猛暑、体調悪化でも診察を受けられない…女子刑務所の実態

 一方、余暇の時間もあり、居室にあるテレビを見たり、ラジオを聴いたり、読書をしたり、日記や手紙を書く人が多い。

「新聞を回し読みすることができました。また、本を購入することができ、『週刊女性』も買えました。おいしそうな料理がのったレストランの記事を見て、『出所したらここに行きたい!』と思うことがみんなの希望になっていました」

 その余暇の時間に大人気だったのが意外にも「写経」だ。

「写経用の本や用紙は無料で支給されるんです。写経をすると仮釈放が早くなるといった噂もあったので、多くの受刑者が取り組んでいました。毎日書き続けるうちに習慣となり、書かないと落ち着かなくなる人もいるほどでした。

 居室でどう過ごせばいいかわからないときやイライラしたときに集中して書くことで、心が落ち着き、気持ちが楽になる効果を実感していました」