安保関連法案を衆院で強行採決した安倍首相は、あえて「60日ルール」を使わず法案成立を目指すという。国民が求めているのはそういうことじゃない。

「国会前デモでわかるように、女性は元気になってきました。安倍首相は第2次政権になってから急に“女性の活躍”を言い始めましたが、言われなくても思ったことは遠慮なく発言します。“デモに参加する”と夫におうかがいを立てることもありません」

 東京家政大名誉教授で評論家の樋口恵子氏は、8月30日の国会前の安保関連法案反対デモで女性の姿が目立ったことについてそう話す。

 壮観とはまさにこのことだろう。雨が吹きつける悪天候にもかかわらず、老若男女が東京・永田町の国会議事堂前に集結した。

 主催者発表によると、『戦争法案廃案! 安倍政権退陣! 国会10万人・全国100万人行動』では12万人が国会を包囲。歩道を埋め尽くした群衆が車道になだれ込み、

「戦争やめない総理はいらない!」

「戦争するな! 屁理屈言うな!」

 などとシュプレヒコールを上げた。全国300か所以上で一斉行動があったという。

「ここ半世紀で最大のデモ。これが民意です。警察関係者の発表は参加者約3万3000人でしたが、どんなに低く見積もってもそんな数ではない。政府は見て見ぬふりをしてはいけません。説明不足で国民の理解を得られていないのではなくて、危ない法律だから反対されているんです。内容を理解していない国民はデモには来ませんよ」(ジャーナリストの大谷昭宏氏)

 しかし、安倍首相は見て見ぬふりをした。8月30日は官邸にも永田町にも近づかず、ほとんど東京・富ヶ谷の私邸で過ごしたのである。

 さらに、大阪市の橋下徹市長がデモについて、

《こんな人数のデモで国家の意思が決定されるなら、サザン(オールスターズ)のコンサートで意思決定する方がよほど民主主義だ》

 とツイート。有権者1億人の《何%なんだ?》と冷や水をぶっかけるように記した。

「橋下氏は政権にゴマをすっただけ。なんでもかんでもウケ狙いで、今回は見事にスベってしまった。気にする必要はありません」(大谷氏)

 参院で審議中の安保法案は、衆院再議決できる60日ルールを使わず、あくまで参院で採決して成立を目指すという。しかし、そんなことで反発が弱まるはずがない。

 前出の樋口氏は「女性が怒っている理由は3つある」として次のように話す。