■バラエティーでもドラマでも果敢にチャレンジした'80年代

 開局当初の“母と子のフジテレビ”から、'80年代に“楽しくなければテレビじゃない”と、変革したフジテレビ

 そのキャッチフレーズを象徴したのが、バラエティー『オレたちひょうきん族』や『笑っていいとも!』。“ダブル浅野”主演の『抱きしめたい!』や『東京ラブストーリー』などのトレンディードラマや『北の国から』シリーズも、人気を牽引した。

 『オレたちひょうきん族』は、当時、圧倒的な人気を誇ったTBS系『8時だヨ!全員集合』(土曜夜8時)の裏番組として'81年にスタートした。

 『─全員集合』が、ザ・ドリフターズの作り込まれたコントに対して、『─ひょうきん族』は、ビートたけし、明石家さんまによる、予定調和を排したハプニングのおもしろさがウケた。

 元フジテレビ社員で『フジテレビはなぜ凋落したのか』が話題の著者、筑紫女学園大学の吉野嘉高教授は「台本どおりで進行するそれまでのバラエティー番組とは一線を画していました。番組スタッフや舞台裏のゴタゴタが映り込むのもおかまいなしです。ビートたけしは“ブス”“ババア”などの乱暴な言葉を使ったり、アドリブでロケを休んだことさえ笑いに変えて、テレビの権威や建前の世界を“ぶち壊し”、本音を露呈させる新たな笑いに挑戦していました」

 『北の国から』(倉本聰脚本)は'81年10月~翌年3月まで、民放では異例の半年間、放送された。

「『北─』は、TBS系『想い出づくり。』(山田太一脚本)の裏番組で、お互いに視聴率を食い合って、数字はよくなかった。悪かったら途中打ち切りになるはずが、制作者が“勝負しましょう”と一生懸命だった」(前出・音教授)

 結果、最終回は視聴率20%を突破。以降、スペシャル版が11作制作され、最高は38・4%(『北の国から2002遺言前編』)、最低でも20・5%(『北の国から87初恋』)と、高視聴率を記録。看板番組になった。

 それ以降も、『101回目のプロポーズ』(平均視聴率23・6%)、『愛という名のもとに』(同24・7%)、『ひとつ屋根の下』(同28・4%)などが、F1層(20歳~34歳女性)と呼ばれる女性たちに支持され、ヒットした。

 青春時代に夢中になって見たという方も多いはず。そんなフジテレビが、ここ数年は、ヒット作に見放されている。

 今春の連続ドラマでは、福山雅治主演の『ラヴソング』が“月9”史上最低の平均視聴率8・5%。芦田愛菜&シャーロット・ケイト・フォックス主演の『OUR HOUSE』は、低視聴率のため途中打ち切りになった。

「個人的には、打ち切りにせずに、歯を食いしばっても続けたほうがよかったと思います。途中でやめたことで、やっぱりフジテレビはへたっている、凋落しているという渦を拡大させただけです」(音教授)

 平日昼の定番だった『笑っていいとも!』や『ごきげんよう』、東海テレビ制作の“昼ドラ”を終了させ、早朝4時から夜7時まで15時間の生放送を編成し、大ナタを振ったが─。

「生放送は“テレビの原点”とかつてはいわれました。しかし、視聴者の慣れやリテラシー(情報力)の向上で、生放送でもおもしろくないものや情報量の少ないものは見られなくなっています。

 なので、そもそも“15時間生放送”をセールスポイントにはできないと思います。生放送することで、番組制作費の削減はある程度、実現したはずですが、それ以外の効果は今のところ見えていません」(吉野教授)