人間は予想外のことに感動する生き物

 川村さんは、「人間の感情はややこしくって、こうなる、とわかっていると感動しないんです」と言う。

「人間って予想外のことが起きたときに、笑ったり泣いたり感動したりする生き物なんですよね。僕が海外小説を選ぶのも、予想ができないからです。

 例えば日本の小説で、この作家でこういうテーマ、となると、“だいたいこんな感じなんだろうな”って事前にわかってしまうこともある。でも海外の小説で、しかもタイ系アメリカ人が書いている、となったときにまったくどういう小説かわからない。

 女性裁判官と少年の話、しかもマキューアンが書いたって聞いたときに、それはどんな話かわからないけど、なにかニオうよね、という感じです」

 そして、いい本を探しあてるときの条件は“まずタイトル”と断言する。

「タイトルに向かって書く、もしくは向かって書いたものをタイトルにするから、おのずと強いものになる。タイトルがフニャフニャしていたら、作家の覚悟が決まっていないのかなと思います。僕の新刊小説『四月になれば彼女は』もタイトルに向かって書いたところがあります。

 それからおもしろい本を選ぶには、なるべく自分ではないフィルターがあったほうがいいですね。自分とセンスは違うけどおもしろいなと思える人に聞くと、感動する本に出会えると思いますよ」

<プロフィール>
川村元気(かわむら・げんき)
映画プロデューサー、小説家。1979年、横浜生まれ。映画『告白』『悪人』『モテキ』、現在公開中の『君の名は。』『怒り』などを製作。'12年『世界から猫が消えたなら』で小説家デビュー。最新小説『四月になれば彼女は』が11月4日に発売予定