「業務上過失致死まで入っている。一緒にヘマをやって、自動車事故を起こそうと計画するのか? あり得ない。前回も含めて、いかにおおざっぱな法整備で臨んでいるかということがわかります」(大谷さん)

 公明党への配慮から、対象犯罪の数を半分まで絞りこむ動きもあるが、

「'06年に、当時の民主党(現・民進党)が対象犯罪を300に減らした修正案を出した際、自民党の細田博之幹事長(当時)は“このままでは批准できないので1度成立させて、もう1回改正して2段階でやる”と明言していた。数を削っても、作ってから法改正して広げる恐れが高い」

 安倍首相が今国会で共謀罪の必要性を説くのは、こんな理由もある。

「この夏、G7サミットが再びパレルモで開かれます。参加7か国のなかで条約に批准していないのは日本だけ。手ぶらで訪れるわけにはいかないため、安倍首相は共謀罪を作ろうと急いでいるのでしょう」

“戦争反対”と落書きする計画を立てただけで罪に

悪夢の再来か―。'06年、東京・永田町で共謀罪に反対する市民団体のメンバー

 どんなときに、共謀罪に問われるのか。

「公衆トイレの壁に“戦争反対”と書く計画を話し合う。これだけで共謀罪になります」

 と山下弁護士。これはイラク戦争のとき、杉並区で実際に起きたケースで、最高裁まで争い建造物損壊罪にあたるとの判決が出ている。当時、もし共謀罪があれば、建造物損壊罪の共謀ということになる。

「基地反対」のプラカードを掲げて座り込む相談をした場合も同様だ。行動に移すまでもなく2人以上が話し合った瞬間、共謀罪に。途中で計画をやめたとしてもダメ。すでに罪が成立している。

 目配せでも成立するとの発言を引き出したのは'05年当時、衆院議員だった保坂展人現世田谷区長だ。

「“暗黙の共謀”といって直接言葉を交わさなくても共謀罪が成立することを当時の法務省刑事局長が答弁し、それを法務大臣も認めています。保坂さんが“目配せと瞬きは、どう違うのか”と追及したら答えられなかった。つまりいかようにでも恣意的に解釈できるということ」

 こうした批判をかわすため、今回の法案では、犯罪の“準備行為”がなければ処罰できないよう変えた。

 しかし何が準備行為となるのか、かなり曖昧だ。

ATMでお金を下ろす。ファストフードでハンバーガーを食べる。普通に見れば犯罪に無関係な行為です。それをあとから振り返って、共謀を裏づける行為だったと警察が判断するわけです。国会の壁に落書きするために、インクを買おうと思って金を引き出したのだろうとか、落書きの前に腹ごしらえをしたのだろうとか