両親の離婚、荒れた中学生活、14歳でお水の道に。銀座と新宿でNo.1ホステスとなり、夜の女の頂点へ。引退して幸せな結婚のはずが、一転、DVで命からがらの離婚。知識ゼロで飛び込んだITの世界で起業した会社を業界で十指に入る超優良企業に育て上げた激動人生に迫るー。

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 東京・四谷にある、スタイリッシュなオフィスビル。

 会議室で待っていると、「お待たせしました!」

 勢いよくドアが開き、ヴェス社長・久田真紀子(42)が入ってきた。決して大柄ではないのに、全身から圧倒されるほどのパワーがみなぎる。

 その日は、取材内容の説明のために訪れていた。バックナンバーを何冊か差し出すと、『人間ドキュメント』のページにじっくり目を通す。

 やがて顔を上げ、久田はざっくばらんに言った。

「興味本位の記事にならないことは、よくわかりました。でも、いいの? 私で。だって、ここに出てる人たち、波瀾万丈の人生だけど、まともなんだよね、生き方が。私は違うよ。それこそ、ここ(見出し)に、『中学時代に悪さをして警察沙汰!』とか書くことになっちゃう(笑)」

 小学校時代に両親が離婚。中学時代は荒れに荒れた。

 わずか14歳で銀座のホステスになり、夜の世界で泥水も飲んだ。

 そんな久田が、水商売とは無縁のIT業界に参入し、ヴェスを立ち上げたのは28歳のとき。以来、14年、従業員150人、年商10億円の会社に育て上げた。

 ソフトウエアの『第三者検証』。これが業務内容だ。

「第三者検証って、聞き慣れない言葉よね」、そう前置きすると、かみ砕いて説明する。

「パソコンやスマホで、アプリやソフトを使うでしょ。このとき、使い勝手はいいか、誤作動はしないかを、メーカーが世の中に出す前に、私たち第三者の目線で徹底的に検証するの。ときに、開発者が想像もしなかった誤作動が見つかることもある。世に出てからリコールなんてことになると、莫大な損失だからね。私たちの責任は重大なのよ」

 同業他社は100を超えるが、久田の会社は、子ども向けの教材やカーナビの地図などを中心に検証し、ベスト10内に入る。

「人って、顔を見れば職業が想像つくじゃない。銀行員は銀行員、公務員は公務員の顔をしてる。でも私は、まったく見えないでしょ、IT業界の人間には。な?」

 同席していた男性秘書に水を向け、秘書がうなずくと、「おいおい、ちょっとは否定しろ(笑)」と突っ込む。

 姉御肌で、ユーモアもたっぷり。その姿は確かに、IT業界では異色だが、裏を返せば、職業ごときに染まらない、自分の色をしっかり持っている証拠だろう。

「さあ、どっからでも聞いて。私の話が誰かの役に立つなら、何でも答えるから」

 波瀾万丈という言葉でも飽き足りない、壮絶な半生を語ってもらおう。