困っている人を助けなくてどうする?

身ぶり手ぶりを交え、表情豊かに半生を語る 撮影/渡邉智裕
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 入社後は、営業部に配属され、意気揚々と出社した。ところが、待っていたのはいばらの道だった。

「漢字だってろくに読めないのに、ITの専門用語なんて、ちんぷんかんぷん。本人が理解してないんだから、営業に走り回っても、収穫なんてあるわけない」

 師匠からは、3か月以内に注文を取らなければクビにすると言い渡されていた。

 途方に暮れる久田に、同僚たちは「ITの専門知識がないのに、営業なんて無理だよ」と同情した。ストレスで顔中、吹き出物だらけになった。情けなくて、眠れない夜が続いた。

 風向きが変わったのは、入社から2か月が過ぎたころ。

「営業先の超大手メーカーの担当者に、“10億円かけて作ったシステムが動かない”と相談されたの」

 すぐに会社に戻り、担当部署に相談したが、あまりに困難な案件のため、「絶対、直せない」と断られた。

 しかし、久田はあきらめなかった。

「簡単に直せるもんだけ引き受けるなんて、私の性に合わない。困ってる人がいるんだ。全力で助けなくてどうするってね」

 片っ端からつてをたどり、頼みに行った。複雑すぎて、故障の内容すら、うまく説明できなかったが、それでも、必死で訴えた。

 熱意は人を動かした。

 やがて、カリスマと評判のエンジニアにたどり着き、1か月後に問題が解決した。

「どうやって直したのか聞いたら、彼がこう説明したの。“ある機械は日本語を、ある機械はフランス語を話していた。それを全部、フランス語にしただけさ”って。そっか! すごく納得できた。それからは、難しいIT用語は食べ物にたとえてもらったりして、自分なりのやり方で、知識を増やしていったの

 難題のシステムを見事に解決した久田に、メーカーの担当者は大喜びで言った。

「あんた面白いねえ。仕事持っていきなよ」

 これが弾みとなり、別の大手メーカーから、550万円もの大口注文を取りつけた。

「この業界でやっていける」、久田が確信した瞬間だった。

「業界は違っても、水商売と同じ。お客さんの気持ちになって、喜んでもらうために身を粉にする。そうすれば結果は必ずついてくるって」