赤ちゃんマッサージ教室をママたちに開放

 露木さんが、現在の「ベビー&スマイル」教室の前身である「プルメリアハウス」を立ち上げたのは、2009年だ。実家をリフォームしたのを機に、その一室を教室にして、産後体操とベビーマッサージを始めた。

赤ちゃん体操を指導中。スキンシップでママの愛情を感じられると同時に脳と神経が刺激され、感受性も豊かになる
赤ちゃん体操を指導中。スキンシップでママの愛情を感じられると同時に脳と神経が刺激され、感受性も豊かになる
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 実は露木さんは、ベビーマッサージもマスターしていた。1999年、まだ日本に「ベビーマッサージ」という言葉も知られていなかったころ、1歳半だった長男を連れて3週間ほどロンドンに滞在し、ベビーマッサージの第一人者であるピーター・ウォーカー氏のもとで学んで習得したのだ。当時といえば、DVだった夫と結婚していたはずだが……?

「よく行けたねって思いますよね? でも、当時は結婚2年たたないころで優しいところもあったのです。おかげで、そうとう早い時期に習得できました」

 ベビーマッサージの効果を露木さんはこう話す。

「赤ちゃんの脳や神経に刺激を与える方法のひとつですが、マッサージされることで赤ちゃんは“ママに大切に触られている”という愛情を受け取ることができます。幸せホルモンのオキシトシンも分泌され、ママも赤ちゃんも笑顔になれるのです」

 ベビーマッサージを習得後、露木さんは近所のママ友にベビーマッサージを教えてあげたり、月に2回ほど助産院に依頼されてベビーマッサージの講師として働く中で需要を実感し、教室のオープンに至った。

「別れた夫とは養育費をめぐり調停もしていたので、いずれひとりでやっていける収入源を確保したいとは思っていました。ただ、4人も子どもを抱えてひとりで子育てしていたので働きに出かけるのは無理。だから、家の中で何かできないかなと思ったんです。といっても、最初は1000円ぐらいで近所の人にやってあげる感覚でしたから採算度外視でした」

 教室の存在は、ママ友からその友達へと次第に広まっていった。

 このとき、ユニークな試みも行った。1か月に1回教室を開放して、ママの社会復帰を支援する目的で「サロン」を開催したのだ。その根底には、状況に応じて、今できる範囲で今できる一番のことをやっていくのが大事という彼女の信念があった。

「ママの中には、フェイシャルエステができる、ネイルやエクステができる、手相をみれるなど、何かしらの特技を持っているけれど、今は子育て中で休業せざるをえない人がたくさんいました。だから、施術する側もされる側も赤ちゃん連れで来てもよい教室を開放し、練習を兼ねて技術を披露できる場を提供したのです。私自身、仕事を辞めていきなり家庭に入ったとき、社会から離れてしまった閉塞感を味わったので、ママ同士のコミュニティーのひとつとして活用してもらえればと思ったんです

 これが、口コミの起爆剤となった。子連れで出かけられるサロンは毎回、大盛況。

 サロンの存在を知ったママが、露木さんの教室にも通うようになるなど好循環が生まれたのだ。