ペット救護本部で電話相談などをしている山本志穂さんは、もともと動物ボランティアや愛護団体で活動していたが、現状を見るに見かねて知り合いの店の裏庭を借り、『阿蘇くまもとシェルター』を立ち上げた。

 西原村の山の中腹にある『マロンの樹』という素敵なレストランの敷地内だ。ここにはドッグランもあり、現在17頭の犬を預かっている。人件費とプレハブの家賃代だけは飼い主からもらっているが、経営は火の車状態。

 それでも「ペットのためにも、預けている飼い主さんのためにも、頑張らなければ」と力がこもる。

飼い主の意識改革を

『阿蘇くまもとシェルター』で支援者に爪を切ってもらう犬たち
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 熊本県庁職員でペット救護本部の責任者のひとり、江川佳理子さんは、震災後、あえて飼い主にもきついことを言い続けているという。

ペットを飼うときは、災害などの状況も考慮してほしい。飼い主の心構えと準備が大切なんです。熊本に限ったことではないと思いますが、田舎では今でも犬は“番犬”なんです。

 登録や混合ワクチンなども義務づけてはいるんですが、狂犬病の注射しかしていない人も多い。飼い主の意識をどこまで高めるかもこれからの課題です

「自分が病気になったけど、犬がいるから入院できない。何とかしてほしい」といった相談もあったが、ペット側に最低限の処置がされていなければ、一時預かりの紹介も難しくなる。

 猫についても迷子札とマイクロチップ、避妊去勢しておくよう行政から飼い主へのお願いとして啓蒙しているが、今回の震災でそれが浸透していないことがわかった。

「ボランティアに何とかしてくれと言う人もいますが、混合ワクチンを打ってないからペットホテルにも預けられないし、かかりつけの病院がないから、相談することもできないんです」(前出・山本さん)

 熊本県獣医師会の常務理事でもある獣医師・滝川昇さんは、「自分の動物は自分で守るという意識をもっと持ってほしい」と語る。

「どうしたら意識改革ができるのか。課題は山積しています。飼い主には今一度、飼い方を見直してほしい。首輪や迷子札、リードなどはふだんから点検し、ペット用の防災グッズも備えておくことが重要です」

 家族同様のペットだからこそ、災害時、一緒に助かるためには何をすべきか、日ごろから考えておくことが必要なのだ。


取材・文/亀山早苗 1960年、東京都生まれ。女の生き方をテーマに幅広くノンフィクションを執筆。熊本県のキャラクター「くまモン」に魅せられ、関連書籍を出版。震災後も20回熊本に通い、取材を続ける。著書に『日本一赤ちゃんが産まれる病院 熊本・わさもん医師の「改革」のヒミツ』