「同じ感覚」を維持するため

 ’18年もメスの1部残留争いや日本代表のゴタゴタなど混乱が続いている。悔しいことにメスは5月6日のアンジェ戦で敗れて3年ぶりの2部降格が決定。「失望以上の感情で受け入れるのは難しい」と激しいショックを吐露した。

 それでもGKとしてのゴール前での存在感や迫力、オーラをシーズン通して示したのは、誰もが認めるところである。

「“1日1%でも成長する”というのが、今のテーマ。それはクラブでも代表でも同じです。今日と明日は違うし、’10年と’14年、’18年に向かっている今も違う。そういう中でどれだけ自分が成長できるかだと思うし、いちばん肝心なのは自分自身だと感じます。

 ゴールの枠ひとつとっても練習場だろうが、W杯の舞台だろうが、その大きさ自体は変わらない。でも、背負うものや重圧が大きくなると、枠のサイズが違って感じられることもある。W杯の舞台で枠が急に広がったように感じたら、それこそ気後れしていることになってしまう。常に同じ感覚でやれるように、僕はGKとしての自己研鑽を続けていきたい」と強調する35歳の守護神は、メスでの悔しさをバネに1か月後に迫ったロシアで勝利を泥臭く追い求めていくつもりだ。

 今回は初めて家族とともに戦うW杯。2歳半になった健誠君はパパがサッカー選手だとわかってきている。「自分の人生の限られた時間、かけがえのない時間を息子が目にしてくれるのはうれしいですね」と父としての実感を胸に秘め、彼はピッチに立つ。まずは目先のロシアで前回の屈辱を晴らすこと。西野監督体制のチームをひとつにまとめること。それが最重要命題に違いない。

ランニングでは先頭を走り、最年長のリーダーシップを示す
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「永嗣はプロになったときから“40歳までやる”と言っていました。イチロー選手が3000本安打を達成したとき、父・宣之さんが“そういう特別な日に自分がいられるように長生きしなきゃいけない”とコメントされたのを見ましたが、私も同じ心境だと息子に伝えたことがあります。永嗣にも“まだやっていたのか”と言われてもいいから、好きなことを好きなだけやってほしい。日本では30歳を過ぎると下り坂と見られますけど、まだまだ成長期。そう信じて頑張ってほしいです」

 父・誠さんの言葉を胸に、ロシアで日本のゴールを勇敢に守る川島の姿をぜひ見たい。

 

取材・文/元川悦子 撮影/六川則夫

◎もとかわえつこ サッカーを中心としたスポーツ取材を主に手がけておりワールドカップは’94年アメリカ大会から過去6回を現地取材。著書に『黄金世代』(スキージャーナル社)、『僕らがサッカーボーイズだった頃1・2』(カンゼン)ほか。