六本木のディスコのお立ち台でスカウトも!

稲川素子社長

 ドラマ監督の一言に端を発し、意外にもお姑さんの一言が事務所設立という一大決心につながった。こうして外国人専門の芸能事務所『稲川素子事務所』が立ち上がることになる。当初は苦労の連続だったそうだ。

「とにかく忙しくて飛び回っていたので、法人化するまでに1年もかかってしまったんです。それでいざ設立してみたら、所属タレントがひとりもいない状態で。でも、依頼は殺到する。これはマズいと思い、私自身がスカウトしに街に繰り出しました」

――社長自らがスカウトに?どんなところへスカウトに行ったのですか?

「たとえば、外国人が出入りする六本木のディスコに行って、お立ち台で踊るふりをしながら探したり(笑)。六本木の交差点には毎晩のように足を運んでいましたよ。あとは歌舞伎町や大使館のパーティーなど、とにかく、あらゆる場所に出向いたんです」

―すごい行動ですね。なぜそこまで出来るんですか?

「やはり責任感ですね。実績が何よりの世界ですから、とにかくクライアントの依頼に応えることだけを考えていました」

 寸暇を惜しんでスカウトしてきた外国人の数は計り知れない。

――今まで相当な数の外国人をスカウトしてきたと思うのですが、コツのようなものはあるのですか?

「私は人の顔は履歴書だと思っています」

――履歴書ですか。

「その人の人生は、なんとなく顔に滲み出てくるんです。だから、顔を見ればその人がどういう人間かが大体わかるんです」

――具体的なエピソードがあれば教えていただきたいのですが。

「弁護士役の外国人を探していたときに、たまたまエレベーターに乗り合わせた人をじっと見ていたら、弁護士役にピッタリだと思ったんです。それで声を掛けたらその人、本当の弁護士だったんです。あとで外に出て、そのビルを見たら弁護士事務所が入っていました」

――本物を見抜く眼力が備わっているんですか?

「本物と言えば、ヤクザ役の人を探していたら、その筋の本物に声をかけてしまったこともありましたよ。でも、さすがに『俺は出演できないけど、代わりの人を紹介するよ』って言われて、深夜に事務所に行って、エキストラ役を紹介してもらったこともありましたね(笑)」