自分の体験や思っていることを書きたい

 当の酒井さんは、とてもさっぱりとした性格なのだそう。

「私、もともと承認欲求が極端に低いんですね。何かを伝えたいという欲もない。だから誰かの悩みに答える比喩(ひゆ)として、自分の体験を書いているだけなんです。

酒井若菜 撮影/吉岡竜紀
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 例えば浮気されている女の子から相談されたら、“じゃあ別れればよくない?”で終わっちゃう可能性もあるんです(笑)。

 でも、その子の思いに真剣に答えるために自分の似た経験を引っ張り出して、“あのときの元彼の発言は、本当はこういう意味があるかもしれない”みたいな感じで、そこを探って書いていく。

 文章を書くからそうやって感情を引っ張り出すけど、普段の私とは違うので、読んだ方からよくギャップを持たれます(笑)」

 本書のカバーは酒井さんが「すごく大好きで、ずっとお仕事させていただきたかった」というイラストレーターの宇野亞喜良さんによるもの。

「もうひとつ書籍の企画があって、それで宇野さんとご一緒できたらと編集の方と話していたんですけど、このエッセイを先に出すことになって。

 保留になった企画がいつ実現するのかわからないし、自分の感覚では宇野さんと今お仕事したいという気持ちが強かったので、思い切ってお願いしてみたんです。そうしたら即答で承諾してくださって。うれしかったですね!」

 宇野さんは原稿を何本か読み、打ち合わせをした際の印象でこの表紙の絵を描いてくれたそう。さらに、その打ち合わせの帰り道で、タイトルも決まった。

「もともと『うたかた』というフレーズは頭にあって。宇野さんに“タイトルって考えているの?”と聞かれたとき、とっさに『うたかた』が出てきたんです。

 いくつか候補があったのに、その言葉が出たということは……と、運命的なものを感じて決定しました」